ブラックと、とある魔女 (ページ29)

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３〈悪魔と魔女の愛と恋〉ページ29

これは罪ではないのだ。ただの『罰』なのだ。そう脳内で唱えながら、私は右手で杖を握りしめる。
「It is correct what I have done……！」

＊＊＊

〜Bella's Monologue〜

　ずっとずっと、施設の中では私が一番だった。いつも私が指示すれば、みんながその通りに動いてくれたのだ。嫌な顔せず、むしろ嬉しそうに、楽しそうに動いてくれた。
　私には、ヒトを動かす才能があった。憎たらしい両親から受け継いだ、可愛らしい容姿、癒やす声、そして頭脳。全てが、対人関係に特化した個性だった。
　だから私は、今までここをまとめてきた。私がリーダーを請け負って、みんなを動かしてきたんだ。私がまとめているこの世界は、とても平和だった。
　しかし突然、そんな世界を歪ませる輩が現れた。

ーーーAだ。

　齢四歳にして、大人でもたじろぐ本物の美人。刃物の様に鋭い美貌に、芯のある、けれどあざとくこびりついてくる声。更には、私にも負けず劣らずの賢さ。いや、いっそ狡猾とでも言った方がいい。
　ただ単純に頭が良かったわけではなかった。あの次元は、『狡猾』と呼んだほうが相応しい。
　外でも内でも、老若男女構わず、彼女は片っ端から人を惹き込み、それで得た人気を上手く利用して、自分が、得する方へと人を動かしていった。
　その行為が意識的でも無意識的でも、それで傷ついている人は勿論いた。
　私は彼女が許せなかった。人を傷つけるだけでなく、人を動かす役割を私から奪うだなんて、憎たらしい。
　だから私は、Aを罰することにした。私の親友たちも、喜んで協力してくれた。
　焦り、不安がり、醜くなったAの姿を見ていると、なぜだかとても爽やかな気持ちになった。あの眩むような美貌を持った少女が、こんなにも情けない姿を見せてくれるのかと、私は心が跳ね上がった。
　しかし、Aは無駄に挫けなかった。それどころか、まるでチャンスとでも言わんばかりに、そんな状況を利用して人を操っていった。まぁしかし、こちらも既にみんなからは厚い信頼を築いているし、証拠も念入りに片付けて見つからないようにしているから、たとえ報告されても大丈夫だという自信があった。
　アイツが、悪魔を連れてくるまでは、そう思っていた。