1〈魔女雨の誕生〉 ページ2
肉塊やら骨やらを引きずる鈍い音が鳴ると同時に、電車のブレーキ音が、キーッ…という鋭い音を立てて止まった。
もう既に、私の足は止まっていた。線路に広がった赤黒い色彩が、踊るような気分であった心を、冷たくしていく。
「Mom……Dad………?」
悲鳴で溢れる中、私は両親だったものを、ぼーっと見つめていた。
広がっていく血は、赤黒くて、鉄の匂いが強くしたのをよく覚えている。
***
父の両親は既に他界。母方は少々問題があると言うことで、私は児童養護施設に行くことになった。
三階建てのちょっと大きな家だった。院長の人から、一階は食堂やリビング、浴室などがあり、二、三階が子供たちの部屋だ、などと案内される。
案内が終わると、みんなに挨拶するようにと言われ、リビングにて集められた子たちの前で、軽く自己紹介をした。
亡くなった両親に褒められてきた、あの笑顔を作りながら、最後に「Nice to meet you」と言って締め括った。
そんな時、誰よりも早く前に出て、こちらに手を差し伸べたのが、Bellaだった。初対面の印象は、決して悪くはなかった。一般的に見れば普通に可愛らしい見た目をしていた少女。更に賢く、子供たちのリーダーのような存在だったらしい。
「Nice to meet you,A♪」
そう言ってきた彼女の手を、私はニコリと笑って取った。
***
「What intention do you have!!」
「………?」
女子トイレ。私はBellaと彼女の友達に呼ばれ、仕方なくわざわざ夜遅くにここまで足を運んできたのだが、結果がこれだ。
胸ぐらを掴まれ、私は爪先立ちになりながら、意味も解らずBellaに問いただされている。
「What do you mean?」できるだけ穏やかに訊いてみる。
「You are making this orphanage worse!Can you understand!?」
Bellaの言っていることの意味が解らぬまま、私は首を傾げて彼女を見つめた。そしたら、いきなり彼女は私の胸ぐらを離し、その拍子で私は床に倒れ込んだ。肘が少し剥けてしまった。痛い。
「I have no choice but to make you understand if you cannot」
「………」
その日から、私の退屈な日々は、汚い色で彩られることとなった。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時