トリップしたからって美人補正がついてるとは限らない2 (ページ14)

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トリップ58日目ページ14

～Aside～

太宰「前から疑問だったのだけどその恥ずかしい帽子どこで購うの？」

ぷっと嘲笑しながら帽子の事に触れる太宰さんの態度に慣れているのか呆れているのか、中原中也、彼は苛立ちを表出さない

中也「けっ言ってろよ放浪者(バガボンド)。いい年こいてまだ自殺がどうとか云ってんだろ、どうせ」

太宰「うん」

中也「否定する気配くらい見せろよ……」

即答する太宰さんに、思わず突っ込む

うぅん……今なら私逃げられるよねって思ったけど、時々太宰さんがチラチラ此方を見てくる。何だ何だ、逃げるなとでも言いたいのか……

中原中也は気分が良いのか、バッと音をたてて外套を翻し、気障に台詞を吐く

中也「だが今や手前は悲しき虜囚。泣けるなァ太宰。

否、それを通り越して＿＿少し怪しいぜ」

ニヤリと馬鹿にする様に笑ったかと思えば、目を鋭く光らせ、太宰さんの髪を強く掴み上げた

中也「丁稚(でっち)の芥川は騙せても俺は騙せねぇ。何しろ俺は手前の″元相棒″だからな。………何をする積りだ」

僅かな灯りを灯すランプの光に怪しさが増してくるような静けさと疑心暗鬼で溢れたこの地下牢

ていうかこの人太宰さんの相棒だったんだ……

そういえば芥川襲撃の辺りで元マフィアだとか何とか言ってた気がするな。家出る前に漫画読んでたから記憶がまだ新しい

太宰さんは、疑いをかけられているものの冷静というか屈託ないというか……。ひらひらと手錠のかけられた両手を見せびらかすように小さく手を振る

太宰「何って………見たままだよ。捕まって処刑待ち」

中也「あの(・・)太宰が不運と過怠で捕まる筈がねぇ」

太宰さんの言葉に耳を向ける気もなく……否、聞いても納得がいかないのだろう。あり得ないというでも言いたげな声で″捕まるはずがない″と述べる

中也「そんな愚図なら、俺がとっくに殺してる」

腕を組んで、威圧を込めて言った彼の一言で、身体中に寒気が走った。まるで身体中の時が止まったのではないかと疑う程、指先さえも動かすことができなかった

これが、″殺気″＿＿＿

漫画やアニメではよく見た事があるそれも、現実でそんなもの醸し出す人はいない。こんなにも恐ろしいものだなんて、漫画の世界にいない限り、きっと分からないものだ

これが２次元として現実に出たとしたら、きっとゴォォォという効果音が付くに違いない

２次元トリップというのも、中々舐められたものじゃない……。