EPISODE 3 ページ6
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「みんな聞いて、Aの里親が見つかったのよ。明日出発するわ。だから最後の挨拶をしててね」
ママの言葉にみんなの顔が固まる。行っちゃやだと泣く子もいれば、おめでとうと笑顔で言う子もいる。
そしてみんなわらわらと俺のところに集まってくれた。
みんなの顔を見回す。"鬼"の事を知らない無邪気な笑顔。今まで出ていった子達と重なって、胸が痛い。
「A…?泣いてるの?」
サーニャに言われて気がついた。目から流れる暖かい涙。すると、何故かみんなも泣いていた。
「えっ、なんでみんなも泣いてるの?」
「Aが泣いてるからだよ〜」
暖かい気持ちが広がっていき、兄弟達をぎゅっと抱きしめる。みんなも強く抱き締め返してくれた。
前世の家族もこんな風にして抱きしめてくれたっけ。
11年経っても病室の記憶は昨日のことのように覚えている。
その後も、家族みんなで長い間泣きあっていた。
…
俺はカバンの中に荷物を詰めていく。ずっとママが手にしているから脱獄に必要な物は入れられない。最後まで怪しまれないように、出ていった兄弟と同じような感じで入れていく。
「Aっっ!!!」
ノックも無しにいきなり開けられた扉。突然のことに目を丸くしていると、目にたっぷりと涙を溜めたソフィが俺に抱きついてきた。
「ソフィ…?どうしたの…?」
いつも落ち着いている彼女がこんなに取り乱すなんて初めてのことだった。グスッグスッと鼻をすする彼女の背中を優しく撫でながら彼女の言葉を待つ。
「A、死んじゃやだぁ〜」
「…へ?」
"死んじゃやだ"それはこの世界の事を知らないと出てこないはずの言葉だった。なんでソフィがそれを…
「…もしかして、ソフィもハウスの秘密を知ってるの?」
ソフィは顔をガバッと上げて俺を見つめる。その目は、どうしてそれをと言っているように見えた。
「ソフィ"も"って…もしかしてAも…?」
俺は大きく頷いた。
「な、なんで…」
"そんな冷静でいられるの"という意味を込められた疑問。鬼に食べられてしまうのに、可笑しいと彼女の目が揺れている。そんな彼女の目を見て言う。
「大丈夫、俺は死ぬつもりは無い」
「…え?」
間抜けな声が彼女から零れる。そりゃそうだ、意味がわからないだろう。
「俺は、ハウスのみんなで脱獄したいと思っている」
ソフィにしか聞こえない声でそう呟いた。
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Rabbit book(プロフ) - 公務員さん» ありがとうございます!嬉しいです(*´-`*)更新頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いします!! (2019年8月10日 18時) (レス) id: 5389d4eda8 (このIDを非表示/違反報告)
公務員 - あ、、、、続きが気になって仕方がない、、、、、!更新楽しみにしてます!! (2019年8月8日 12時) (レス) id: 567cb90382 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbit book(プロフ) - 花風雪さん» ソフィは、、、、どうなってしまったのでしょうか……続きをお楽しみにしててください!笑 (2019年6月17日 16時) (レス) id: 5389d4eda8 (このIDを非表示/違反報告)
花風雪(プロフ) - (´・Д・)ぽかーん、ソフィィィィ! (2019年6月16日 19時) (レス) id: e781858e49 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbit book(プロフ) - はるせさん» そうです、やばいんですよ!!(笑)更新頑張っていきますので応援よろしくお願いします! (2019年5月13日 19時) (レス) id: 5389d4eda8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま る | 作成日時:2019年4月3日 14時