3の世界【仲良しか!】 ページ7
湯上がりの身体を冷ます為に、少しだけ外に出て海を眺める。
こうして異世界で1日が終わる度に、あのウイルスにやられた人達は5分ほど苦しんでいる…らしい。
早く解決したいのだけど…
神様が願いを叶えてくれると楽観視していられないので、万が一に備えて飛んだ異世界の先で薬の材料を集めなくては。
それを思い付いたのは貰ったドレスを持ち越せたお陰だ。多分余程のものじゃなきゃ持っていけるんだろう。
考え事に耽っていると、足音が近くで聴こえた。
「…夢子ちゃん?」
「あ…Aちゃん」
フランスから貰ったであろうジュースを持って、私を見ている夢子ちゃん。涙の跡が少しあった。
「静かだねぇ」
私の言葉に「うん」と小さく返した夢子ちゃんは、深呼吸して意を決したように発言した。
「Aちゃんは。…死んだ人が…いや、人生を記憶持ったままやり直せるって聞いたら、どう思う?」
かなり夢子ちゃんの核心に近い発言だと思った。
さて、どう思うか…だって?
「嫌だなって思うよ」
えって顔をして驚く夢子ちゃん。いや、だってさ。
「確かに記憶を持ってやり直せれば人の死を防げるかもしれないね」
「なら!」
「でもそれは自分を含めて自分を知る人達が消えたも同然なんだよ」
「!」
確かに上手くやり直せば両親と仲良くなって、お婆ちゃんも元気なままで、美優も死ななくて済んだかもしれない。いっぱいいっぱい迷惑を掛けなくて済んだだろうし、普通に幸せだったかもしれない。
けれど…
「自分の大切な記憶も無かった事になる。友人だったヒトから初めましてと他人行儀に挨拶される事になる。それどころか多分、前の記憶が邪魔になるよ。そして大切な記憶は何れ本当にあった事か解らないものになる。
今の全てを捨てても構わないと思っている人は、意外と少ないんじゃないかって私は思う」
とても傷ついた顔をして震える夢子ちゃん。にっと笑って、「それに」と言うとビクッとした。
「下手したら夢子ちゃんと出会った事まで無しになっちゃうよ?それは寂しいよ」
おや?何故かとても真っ赤な顔だぞ夢子ちゃん。
「凄い口説き文句」
そう呟いて逃げた。
…変な夢子ちゃん。
部屋に戻ると、アメリカとロシアがにらめっこしていた。
意味わからなくて日本を見ると静かにケーキを指差した。
…残り一個を争ってたのか。
結局勝負がつかず、半分こにして食べていた。
「君のが大きいよ!」
「口付けたからもう僕のだよ」
仲良しか君ら!
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作者名:ヴァーニャ | 作成日時:2017年3月10日 0時