3の世界【撤退戦】 ページ35
それは突然だった。
ミシミシと音が鳴ったと思えば、中に侵入してきたニャルラトホテプ。
咄嗟に延びてきた触手を避けて皆を退避させる。
「…他に出口作れないか?」
アーサーが奴を睨みながらそう言うので「やってみる」と、私から少し離れた所に扉を出した。
…ニャルラトホテプ、マイホームの中にずっと居座られたらどうしよう?
魔法がまだ使いこなせてない組を避難させ、私とアーサーが殿をする。
ニャルラトホテプは幸いにも居座るつもりはないらしく、最悪にも私達を追い掛けるつもりのようだ。
アーサーに襲いかかろうとするニャルラトホテプ。アーサーを突き飛ばして助けようとするも、触手はにゅるにゅると私に巻き付いてきた。
…もたもたする私の眼前でアーサーが飲み込まれた。
慌てて武器を手にして切り裂く!
キンっと鋭い音をさせてニャルラトホテプを切り裂き、飲み込まれていたアーサーの姿が見えてきた。
「A!姿勢を低くしろ!」
「了解!」
アーサーに言われた通りに姿勢を低くすると、暴力的なまでに魔力が注ぎ込まれた魔法が発動した!
アーサーの魔法はニャルラトホテプを倒すことが出来なかったけれど、退却するには充分だった。
稼いだ時間で扉をくぐり、心配そうな死にそうな顔をした皆を伴い直ぐ様部屋から飛び出す。
と、そこに夢子ちゃんが来てしまった。
「お、可笑しいの!本当に変なの!」
主語その他諸々抜いた言葉を叫ばれても困るよ!
落ち着かせる暇もないので「後で訊く!」と叫び、夢子ちゃんを連れてさっさと逃げる。
ニャルラトホテプは何をしているのか動きが遅いので、皆を連れて狭い船の中の通路を走っていても追い付かれたりしなかった。
…確かに可笑しい。
船の端まで行く最中、船員と誰一人鉢合わなかった。
それに遠目で見えた攻略対象は、よくあるゲームのバグみたいな状態になっていたし…
「イギリスみたいにパブってて恐いんだぞ…」
「流石にイギイギよりはましじゃないかとお兄さん思う」
アメリカとフランスが、冷や汗を流しながら近寄ってくるニャルラトホテプとついでに攻略対象を揶揄っている。
夢子ちゃんも訳が解らないなりにピンチと感じたのか、ふるふると震えていた。
ニャルラトホテプも震え始めた。え、何?
そしてニャルラトホテプはぺいっと何かを吐き出した。
「…アーサーって双子なの?」
「いや…違う筈だが…」
吐き出されたのは、髪と目の色が違うアーサーそっくりの男性だった。
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作者名:ヴァーニャ | 作成日時:2017年3月10日 0時