2話 ページ2
「久しぶりじゃん、高校楽しい?」
「ま、まあ」
ど う し て こ う な っ た 。
ドアを開けた向こうに立っていたのは川上くんだった。三年ぶりに見た彼は黒髪ではなくちょっと染めてて、関西弁ではなく標準語で。すっかり東京の大学生といった様子だ。
驚いてまともな思考もできてない私は、ゆっくり家の中で話そうという提案に頷いてしまった。
特急列車のような話の展開に頭が処理を拒否してる。実家に荷物を取りにきたらしい。小綺麗な服で来て良かったと、心底安心した。
「今高三でしょ、大学どこ行くとか決まってるの?」
「あんまり遠くには通いたくないかなあ、東京なんか怖いし」
というのはウソで、本当は川上くんと同じように上京したいのだが。
「いや、上京してみてもいいんじゃない」
一瞬、ドキリとした。ほぼ自惚れだけれど、東京においでって言われた気がしたから。
「……そうかな」
「うん、数がある分選択肢は多い。大学は専門的な勉強をするから本当にやりたいことをしたほうがいいよ。……ていうか東京が怖いんじゃなくて親に言う勇気がないんでしょ」
ごめんね。本当は川上くんと同じ東京の大学に通いたい。上京しなよ、って言ってもらいたいだけなの。
「ばれた?川上くんが言うなら東京の大学狙ってみようかな」
「東大文学部なら僕もいるし」
「いや、私に東大入れと。ほんとドSだよね」
話もなんとなくまとまったので、今が好機と立ち上がる。ノリで会話はできたが手はすでに汗でぐっしょりだ。これ以上彼といると変な勢いで告白でもしそうなので、なるべくこのまま帰る流れにもっていきたい。
「お邪魔しちゃってごめんね、川上くん忙しいでしょ?私帰ったほうがいいよね」
そそくさとリビングのドアに手を掛ける。そしてドアを開け――。
「あ、ねえ。待った」
ようとしたら誰かに手を掴まれた。誰かって川上くんしかいないんだけど。
って、え?川上くんが私の手を??
「LINE、交換しよ。相談でもなんでもいいから何かあったら連絡して。忙しいかもなんて気を遣わなくていいから」
どうやら今日が命日らしい。幸せで死ねる。
「は、はい。LINE。スマホどこだっけ、えーと」
かわいい女の子なら「LINE交換やったー♡えー?ほんとにいいんですか??」とかサラッと言えるのだろう。悲しいかな私には無理だ。コミュ障みたいだが、弁明させてもらう。好きな人前だとみんなコミュ障!!以上!!
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りりみ100(プロフ) - あずきさん» コメント本当に嬉しいです!徐々にペースを上げられるように頑張りますね〜 (2019年5月28日 0時) (レス) id: 7f5be3d05f (このIDを非表示/違反報告)
りりみ100(プロフ) - のんさん» 今すべて確認し訂正しました。ご指摘ありがとうございます。以後気をつけます......! (2019年5月28日 0時) (レス) id: 7f5be3d05f (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - 応援してます、頑張ってください! (2019年5月28日 0時) (レス) id: ca76593980 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 川上さんの「拓朗」の「朗」が間違っています。直していただけると幸いです。 (2019年5月28日 0時) (レス) id: c1a319b9dd (このIDを非表示/違反報告)
りりみ100(プロフ) - 蒼さん» どひゃー嬉しいです!年上川上さんとか最高ですよね〜。更新頑張ります (2019年5月26日 19時) (レス) id: 7f5be3d05f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりみ100 | 作成日時:2019年5月25日 23時