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距離感バグ ページ9

「……ッ!いらっしゃいませ……」

「やぁ、こんばんは」

(あー……あの人だ。ルームウェアの事、一言ぐらいは言うべきだよね……?)

内心冷や汗をかきながらぎこちない笑みを浮かべて挨拶を返す。

あの人はいつもより多く商品をカゴに入れていて、どことなく話をしたいという意思を感じた。

「お疲れ様、今日は寒いね」

「あっ……は、はい……そうですね……」

以前よりも心做しかグイグイ来ているように思える。

どうしよう、いっその事、仕事に支障が出ると伝えてみようか。

「君は猫が好きなんだろう?……わたしも猫は好きだ。ほら、このネクタイも猫っぽいだろう?」

(……?猫が好きな事、言ったっけ……?たまたま……?)

接客中だというのに思わず訝しげな顔をしてしまった。

男は私の動揺に気付いていないようで、手に取ったネクタイを私に見せてくる。

「あ……はい、確かに……そうですね……」

猫っぽいシルエットではあるが、描かれているのは言ってしまえばドクロマークだ。

可愛い、とはお世辞にも言い難い。

(やっぱり、ちょっと変わってる人なんだろうな……)

「……猫には癒されるよ。ずっと触っているだけで疲れが癒えるんだ」

「わかります……可愛いですよ、ね……?」

不意に髪に触れられ、身体が硬直する。

「ちょ、ちょっと……あの……?」

「あぁ……すまない。君も猫みたいで可愛らしいなと思ってね」

彼は悪びれもなく、しれっとそんな事を口にする。

(ど、どういうつもりなんだろうこの人……?)

顔に熱が集まるのを感じた。

男性から可愛いなんて言われたのは初めてだ。

あと、不用意に触れるのは警察案件かもしれないが、混乱し過ぎて目の前のことの対処にいっぱいいっぱいでそれどころでは無い。

「あ、ありがとうございます……私なんかには勿体ないお言葉、ですね……」

「謙遜をするんじゃあない。君はとても可愛らしいよ。君がわたしのものになればいいと常々思っている」

「は……えっ、あの、それって……?」

彼は私の反応を楽しんでいるのだろうか。

子供の頃にもそうやって乙女心を弄ぶ輩はいたものだが、大人がやるのはタチが悪い。

こんなの冗談に決まってるのに、本気にしてしまいそうで自分が嫌になる。

「意地悪してすまなかったね」

「……揶揄わないでください……」

「揶揄ってなんかないさ。わたしのものになればいいのにと思っているのは本心だよ」

目を合わせるのが怖くて、私は顔を伏せた。

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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます!本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます!読破お疲れ様でした! (1月31日 13時) (レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…!細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…! (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……!(コメントありがとうございます!作者的にももどかしいです!!!) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー!!!もどかしい!ドキドキしますね…!!! (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね! (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奇妙な前髪 | 作成日時:2024年1月8日 23時

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