好感度- ページ8
「いらっしゃいませ……あっ」
「久しぶりだね」
「は、はい、お久しぶりです」
彼女に会えたのはあれから五日経った頃だった。
久しぶりに聞いた声には心做しか覇気がなく、少し疲労の色が見える。
「君、顔色が悪いようだが……」
「クリスマス前だからかちょっと忙しくって……でも大丈夫ですよ。ありがとうごさいます」
彼女はそう言って力なく笑った。
(クリスマス……彼女と過ごせたら幸福だが……何かそれらしい理由を付けて約束を取り付けられないだろうか……名前も知らないのに、無理な話だな)
「……そうだ、よかったらこれを」
鞄の中から少し潰れたプレゼントの包みを取り出して彼女の手に握らせる。
「え……えっ!?い、いいですよ!」
「わたしが良いと言っているんだ。クリスマスプレゼントというやつだよ。次にいつ会えるか分からないからね……」
「えぇ……わ、分かりました。ありがとうございます……」
彼女は戸惑いながらも素直に受けとり、それをぎゅっと胸に抱いた。
「ぼくはこれで失礼するよ……メリークリスマス」
「あ……ありがとうごさいます、メリークリスマス!またのご来店お待ちしてます……!」
彼女の戸惑う顔は困惑に満ちたものだったが、最後には精一杯の笑顔をわたしに向け、手を振ってくれた。
(あぁ……いい子だな)
思わず笑みがこぼれる。
気が抜けてつい、ぼくと言ってしまうほどに心を許してしまっていた。
今日家に帰り、プレゼントを開けた彼女は一体どんな反応をしてくれるのだろうか。
好みに合うといいが……気に入ってくれるといいな。
彼女の喜ぶ顔を想像して、鼻歌交じりに帰宅するのだった。
(……あの人も疲れてたみたいだけど……ほんとによかったの?貰っちゃって……)
思わぬ贈り物を手に帰宅し、Aは慎重に包装を解いていく。
中に入っていたのはルームウェアだった。
(ふわふわだわ……しかもこれ猫耳としっぽついてる……?可愛いけど……お、重い……!)
正直な話、あの人は顔がいいし、ちょこちょこ話しかけてくれるのは満更でもなかったし、お菓子の差し入れも嬉しかったが……着る物となると危ない人の予感しかしないわけで。
(い、いや……あの場で突き返せなかった私の負けか……ありがたく受け取ろう……)
せっかく貰ったのだし、と袖を通す。
(なんでこういうルームウェアってズボンだけ短いんだろうね……可愛いけど寒い)
あの人はそういう趣味なのか、と余計に怖くなった。
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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます!本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます!読破お疲れ様でした! (1月31日 13時) (レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…!細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…! (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……!(コメントありがとうございます!作者的にももどかしいです!!!) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー!!!もどかしい!ドキドキしますね…!!! (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね! (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奇妙な前髪 | 作成日時:2024年1月8日 23時