『Killer Queen』 ページ24
「家は、どの辺りかな」
不用意に口を滑らせないように気を付けながら、助手席に座らせた彼女に尋ねる。
「歩いて帰ります」の一辺倒だったが、まだ足が痛むんじゃないかと指摘すれば大人しく頷いてくれた。
Aさんが落ち込んでいる今、距離を縮めるまたとないチャンスだ。
みすみす逃す訳にはいかない。
「ここから、カメユー方面に行くと公園……ありますよね、あそこまで送っていただければ、すぐ、ですので……」
「分かった。ひとまずそこまで走らせるよ」
車のエンジンをかけ、入れっぱなしにしているCDを再生する。
「……洋楽、お好きなんですね」
「意外かな?」
「……ちょっとだけ。ゆったりして甘ったるい……気まぐれな猫ちゃんみたいな曲……」
彼女は音楽に浸るように目を閉じた。
キス待ち顔では無い事は分かっているが、どうしても唇に目がいってしまう。
いつもより色付いた可愛らしい唇から目を逸らし、一声かけてから車を走らせる。
「良ければCDを貸すよ。気が向いた時に返してくれればいい」
「えっ……い、いいん、ですか……?」
「勿論。この曲、聴いていると落ち着くだろう?なんなら返さなくたって構わないさ。それで君が元気になってくれるならね」
彼女はミラー越しにわたしを見て、遠慮がちに笑った。
目が合っただけで今日はもう満足してしまいそうだ。
「ありがとうございます、吉良さん。お借りしますね」
「あぁ、たくさん聴いてくれ。他のトラックの曲も良いから、是非」
少し元気を取り戻したらしい彼女になら、踏み込んだ質問をしても大丈夫だろう。
あくまでも世間話という
「そういえば、Aさんは一人暮らしなのかい?」
「いえ……大学の関係で兄の家にお世話になってます。みーこちゃんもいるので、三人暮らしですね」
「みーこ?」
「あっ、兄の家の猫ちゃんです。可愛いんですよ」
Aさんは少し照れ臭そうに笑う。
お兄さんがいるというのは初耳だったし、猫が好きなのも飼っているからなのか。
「あ、写真見ますか?」
Aさんは携帯を取り出して写真を見せてくれるが、運転中だったので一度路肩に停める事にした。
「キジ猫か……いい顔をしているね」
「分かります?イケメンなんですよ、この子!」
彼女がこんなに嬉々として話しているのを初めて見たかもしれない。
あの男と一緒にいた時ですら見た事がない表情に、心がざわついた。
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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます!本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます!読破お疲れ様でした! (1月31日 13時) (レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…!細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…! (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……!(コメントありがとうございます!作者的にももどかしいです!!!) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー!!!もどかしい!ドキドキしますね…!!! (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね! (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奇妙な前髪 | 作成日時:2024年1月8日 23時