執行 ページ19
マイクを受け取ると、Aは可愛らしいポップスから祈るような賛美歌まで歌いこなす。
声質自体は可愛らしい部類だが、ロングトーンが綺麗に伸びている。
「ど、どうかな？」
「……」
「あれ？ダメだっかな？歌ったの久しぶりで自信ないんだけど……」
「いや……よくもまぁ歌えるな」
「う……下手でごめん……」
実際かなり上手いのだが、それを口にすると調子に乗ってしまうのでやめておく。
(しかし……あのおっさんの警告を無視してここまで来てよかったのか……？)
今更ながら不安になるが、まだ何も起きていないから大丈夫だろう。
マイクを受け取り、ロックな曲を叫んで思考を掻き消す。
彼女がにこにこしながら拍手してくるのが、少し滑稽だった。
(……まぁ、外で結構見せつけたし、ショックだったのかもな)
「喉渇いた。飲み物とってくる」
「あ、なら私も……」
「いや、Aは歌っててくれ。ドリンクバー、階跨ぐから時間もったいないしな」
「うん、分かった。いってらっしゃい」
席を立つ瞬間、ゾクッと寒気が走った。
「……！」
「どしたの？」
「いや……なんでもない……」
(気のせいか……？まさかあのおっさん、ここまで着いてきてるのか？)
虫の知らせのような、一人になるのはマズイという直感はあったが、無視を決め込んで個室から出た。
パッと見、廊下には誰もいない。
つけられてはいないと安心し、階段の踊り場へと足を踏み入れた瞬間、誰かに首を捕まれ、壁に押さえつけられた。
「ッ……！はっ……な、せ……！」
喉が圧迫されてまともに声が出ない。
「忠告……したはずだが？」
「！？て、めぇ……ッ」
必死に目だけを動かして男の姿を確認する。
予想通りの人物に怒りが込み上げるが、俺を壁に押さえつけているのはこの男では無い。
見えない何かに首を絞められている。
「な、なんだよ……これ……！なんで、俺動けな……」
「質問は許可していないぞ……」
男の顔が迫る。
その目はガラス玉のようで、一切の光を宿していなかった。
「彼女にこれ以上関わるな、と言ったはずだ……もう夜遅いが、別れ話はいつするんだ？随分と遊び呆けていたようだが」
男が俺の服のポケットに手を伸ばす。
俺の携帯のアドレス帳を開き、男は顔を顰めた。
「女の子の名前ばかりだな……彼女達も、Aさんと同じように騙しているのか？それに君の住所……M県内だ。遠距離って程じゃあない……頻繁に合わない口実、という事か」
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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます！本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます！読破お疲れ様でした！ (1月31日 13時) (
レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…！細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…！ (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……！(コメントありがとうございます！作者的にももどかしいです！！！) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー！！！もどかしい！ドキドキしますね…！！！ (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね！ (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奇妙な前髪 | 作成日時：2024年1月8日 23時
