追跡 ページ14
ストーカーは始末したが……問題はもう一人の彼氏の方だ。
店員は映画デートがどうの、と言っていたが、この町には映画館は無い。
となると、Aさんは少し遠出をするはずだ。
駅で待ち伏せしていれば彼女を追跡することは可能だろう。
デートの中止は厳しいが、その後に男の方を始末する事は出来る。
Aさんが他の男と一緒に過ごしているのを見て耐えられるかどうかは分からないが……試練として受け止めるしかない。
もし万が一、彼女が男とどこかで一夜を明かす事になるようなら、その場で男を始末する。
そうでないなら……。
クリスマス当日。
朝から張り込んだかいもあり、彼女の姿を見失うこと無く、彼氏とのデートを追跡する事が出来た。
柔らかいシルエットのワンピースと、髪を彩る大きめのリボンがよく似合っている。
電車を乗り継ぎ、町の外へ。
先に待ち合わせ場所に着いていた男は、誠実そうな好青年であった。
彼女を見つけるなりパッと笑顔になり、互いに駆け寄っていく。
(……なるほどな)
わたしに言わせれば、男と彼女は恋人と呼ぶには程遠い関係に見えた。
挨拶を交わす時のぎこちなさ、触れる直前に動きを止めてしまう気恥ずかしさ……その他も挙げるとキリが無いが、付き合う前と言った方がしっくりくる。
会話自体は弾んでいるようで、Aさんは見た事がない笑顔を男に向けていた。
男の方は彼女の気を引こうと必死で、その甲斐あってか彼女の笑顔は男に向き続けていた。
彼女の無垢な瞳が美しい。
しかし、2人のやり取りを眺めていると、胸に黒い染みが広がっていくのを感じる。
自分の知らぬ彼女が男のせいで晒されているという嫉妬。
キラークイーンを出してしまいそうになるが、自分の理性で何とか耐える。
映画館に着き、わたしは彼らと同じスクリーンのチケットを購入し、上映中の様子を伺う事にした。
映画自体は大衆向けの擬人化された動物が、周囲を巻き込んで冒険をする、といったよくある内容だ。
それを彼女は楽しそうに見つめ、リアクションで声が出そうになるのを手で押さえて堪えたりしている。
天使のように愛らしい彼女の姿は何時間でも見ていられるが、男がいつ彼女の手を握ろうかと伺っているのを感じられて鬱陶しい。
湧き上がる殺意を唇を噛んで押し殺したが、男は男で結局上映中に手を握ることは無かった。
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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます!本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます!読破お疲れ様でした! (1月31日 13時) (レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…!細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…! (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……!(コメントありがとうございます!作者的にももどかしいです!!!) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー!!!もどかしい!ドキドキしますね…!!! (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね! (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奇妙な前髪 | 作成日時:2024年1月8日 23時