強み ページ21
「食べられるか」
『はい』
鬼は人間を食べて自身を強化する。
もちろん私も人間を口にするが、猗窩座様が言うには私は少食だったらしく、一度に食べることが出来る人間の量が少ない。
猗窩座様は「焦らず慣らしてゆけばいい」と言うけれど、このままの状態が続けば流石に問題だ。
「猗窩座」
ふと、そう声をかける存在が現れた。
私は抗い難い衝動に突き動かされてその場で平伏した。
猗窩座様は驚き、膝をつく。
「……無惨様、お久しぶりです。先日はお世話になりました。」
無惨様。
その名前に、私はひどい既視感を抱いた。私はこの鬼を知っている。
「お前が鬼を増やすことは珍しいので見に来てみれば、女ですか。」
「……」
猗窩座様は何も言わない。
「名は?」
『ぁ………名、は……。』
答えられずにいると、無惨様はふっと笑った。
弱い鬼に対する侮蔑のようだった。
「蝦夷の鶴のような色ですね。仙鶴と名乗りなさい。」
『はっ、はいっ、有り難き幸せ……。』
「無惨様、俺になにをお望みですか、」
無惨様が猗窩座様を一瞥した。
「柱の首と、青い彼岸花。」
彼の体が凍るのが分かった。
だが、無惨様はそんな様子の猗窩座様を見て愉快そうに口端を歪めた。
「いつだって私の願いはそれだけです。
……来なさい仙鶴。少し話をしましょう」
猗窩座は席を外すように、と言われて、彼は去った。
頭をあげることが出来ず、ずっとそこに平伏していた。
「その血鬼術、上手く使えば強力になりますね。」
血鬼術。鬼が使う異能。
私が持ち合わせているとは思えない。その存在を感じたことも、発したこともない。
「まだ未熟ですね。人間を十分に食えていない。
──しかし、それはある意味強みです。」
それから彼は、私の強みを説明し始めた。
曰く、鬼狩りは鬼の気配に敏感だ。鬼には血の匂いがこべりついている。そしてそれは一度の食事量に比例する。
私は元々一度に受け付ける量が少なく血の匂いが薄い。
顔さえ隠せば人に紛れることが出来る。
「──人間に紛れて情報を持ち帰れば、それだけでも十分な存在意義です。」
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#鬼の味方 - この小説凄くはまりました! 続きがみたいです! 猗窩座カッコ良すぎてやばいです! あと、無惨様は敬語使わないですよ! 「○○しなさい」じゃなくて「○○しろ」の方が良く言ってます! 応援してます!!! (2020年12月30日 5時) (レス) id: 26ef1f84d5 (このIDを非表示/違反報告)
柊 飛々(プロフ) - rioさん» 光栄です。これからもよろしくお願いします。 (2020年11月5日 6時) (レス) id: 04e9c86118 (このIDを非表示/違反報告)
rio - 更新楽しみに待機させていただきます! (2020年11月4日 23時) (レス) id: 0ce86c1008 (このIDを非表示/違反報告)
柊 飛々(プロフ) - マリイさん» あ、奇遇ですね。私も猗窩座様と魘夢ちゃんは推しです。ご拝読賜り光栄です。これからもよろしくお願いします。 (2020年11月1日 21時) (レス) id: 04e9c86118 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 猗窩座大好きです鬼滅の鬼は皆好きだけど1番好きな鬼は猗窩座 魘夢 無惨様の3人 (2020年11月1日 21時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 飛々 | 作成日時:2020年8月13日 0時