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三橋は一瞬で左足を踏み出し、右手を後ろに引いた。
タイミングを合わせてラケットを振り抜く。
打ち返されたナイフが、柳の顔をかすめて後ろへ飛んだ。
ラケットを放り出し、鋭く右手を突きだす。

「怒りの鉄拳っ!!」

三橋の拳が、柳の頬骨目掛けてクリティカルヒット。

柳は宙を飛んで倉庫内の瓦礫に突っ込んでいった。

「俺の仲間に手ぇ出すんじゃねえ!」

その場にいる誰もが一言も発さなかった。発せなかった。






ーーーーーーー



Aはまったく起き上がれそうにない柳と大嶽を見る。

笑ってしまうほどに完璧な負けであった。
目の前にいる理子はまだ戦闘体制を保っていたが、一呼吸置いて北根壊生徒に向かって叫ぶ。

「祭りは終わった…荷物まとめてさっさと帰るぞ!」

背伸びをするAを、理子は待ちなさい、と呼び止めた。

「まだ終わってないわ」

Aは眉を下げて理子に真っ直ぐ向き直る。

「喧嘩は……大将がやられたら負けなんだよ」



「大将って、貴方も北根壊の頭でしょ?」

尚も食い下がる理子の肩に、Aの手が優しく乗った。

「まぁ、そうだけど…」


そう言いながら目線は三橋に。
理子もつられて金髪の男を見た。

「彼、女相手じゃ本気で戦ってくれそうに無いですし」

三橋はその場で小さくジャンプすると、最高のキメ顔でAにウインクを送る。

「その通りです!か弱い女性…ましてやAさんに暴力をふるうなんてとんでもありません!!」

Aは理子に向かって
そういうことだから、と微笑む。
スカートの泥を払いながら出口に向かって歩き出した。

北根壊生徒はヨタヨタと一人残った頭に続く。
出口付近まで来たところでその頭は思い出したように突然振り返ると、智司と相良に向き直った。

「…負けたよ、開久は強え。…ちょっかいかけて悪かったな」

再び倉庫内は沈黙に包まれた。

だがそれも、やがて近づいてきたパトカーのサイレンの音にかき消されるのであった。

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ひんやりだんご(プロフ) - さ??♀?さん» ありがとうございます!これからも宜しくお願いします! (2022年3月27日 20時) (レス) id: c7dc0d49c1 (このIDを非表示/違反報告)
ひんやりだんご(プロフ) - 子猫さん» 応援ありがとうございます( ´ ▽ ` )検討させていただきますね! (2022年3月27日 20時) (レス) id: c7dc0d49c1 (このIDを非表示/違反報告)
さ??♀?(プロフ) - 最高です! (2021年5月23日 2時) (レス) id: 74c8bfbc36 (このIDを非表示/違反報告)
子猫 - 凄く面白くて一気に読んでしまいました!北根の小説全然ないから嬉しいです!ひんやりだんごさんさえ良ければ理子ちゃんと夢主が戦うのも凄く見てみたいです!ひんやりだんごさんさえ良ければ書いてください! (2021年2月1日 3時) (レス) id: 54bec7b90e (このIDを非表示/違反報告)
ひんやりだんご - Luaさん» 楽しんでいただけて良かったです!これからも応援宜しくお願いします! (2020年9月20日 15時) (レス) id: 6187d0d719 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひんやりだんご | 作成日時:2020年7月23日 17時

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