ジョングク栽培キット【JK】

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いらん賞賛とシャッター音がやかましいせいで存在感がうっすうすになっているが、実はこの部屋には私たち兄妹以外にもう1人、正しくはもう1匹、息吹く生命体が存在している。

私の対面に座る金髪のその男は、自分の唇をペロリと舐めながら前髪を無駄に何度もかき上げ、





「ハ〜ァ。なぁに？Aチャン。めっちゃこっち見んじゃん。も･し･や♡俺に見蕩れちゃってる感じ？」





的外れな寒いセリフを吐息混じりに吐き出して、謎の黒い物体が塗られているトーストにかじりついた。





「ジミン何食べてるの？口の周り真っ黒だよ」

「俺くらいになると、ごはんですよを食パンに塗っちゃうのが普通なんだよね〜」

「うん？」

「コップの中身は午後の紅茶。午前中に午後の紅茶。しかもレモンティーなのに、すりリンゴを入れて飲んでるんだ」

「うん」

「デザートのプッチンプリンなんて、プッチンせずにカップのまま食べてやろうと思ってるよ」

「へぇー」

「極めつけには今流れてる今日の料理メドレーッ！あれ、ぜんぶ今日じゃなくて過去に放送されたやつだから」





いつものことだから言いたいことはなんとなく分かるけど、パンくずだらけの髪と黒ひげつけた状態で流し目で見られてもな……。





「どう？ホンモノのワルはやることが違うデショ☆」

「そだねー」

「女の子はみんなちょいワル男が好きだもんね〜！Aチャンが俺に惚れるのも無理ないよ〜！あー参ったなぁ〜！！」





“モテるちょいワル”を履き違え、頭のてっぺんに赤い薔薇を咲かせて私を口説くこの残念なチャラ男ジミンは、オッパが一緒に暮らしているピクチンだ。

オッパに育てられてるだけあって、ちょっと……いや、けっこう普通の感性とズレてるところがある。





最近は昔流行ったヤンキー漫画にハマっているらしく、変に感化されてこの有様。

この間はやめられないとまらないエビせんを一本でやめたと思ったら、逆に一本満足バーを二本同時食いしてドヤ顔してきた。

ワルい行為の解釈違いと、レパートリーの少なさには笑った。





「俺に口説かれて日和(ひよ)ってる奴いる〜？」

「これまた急だな」

「い、ね、え、よ、なぁ！！？」





金髪に染めたのも、きっとマイキーに寄せるためなんだろうな……。


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