今日もこの森の中で【ALL】 (ページ20)

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「えーっと、今うちに何もないからなぁ。カップ麺すらない」

『それならデリバリーする？それか何か買って帰ってもいいし。ヌナは作れないだろうから、簡単なものなら僕作るよ』

「いやぁ…………。あ！今日はちょいとこの後ご飯行く約束してたんだった！悪いね、また今度だね」

『誰と？もしかしてジミニヒョンたち？それなら一緒に行きたい！』

全然怯まないジャン、むしろどんどん積極的になってるジャン

またゾーンに入る前に言いくるめなければ

これは使いたくはなかったが、もうこの手でキメるしか方法はなさそうだ

「また今度。なんでも(・・・・)ひとつ言うこと聞いてあげるから、ね？」

私より大分上にある頭に手を伸ばしてよしよしと撫でてあげると、気持ちよさそうに目を閉じる

さらさらの髪が指を通りシャンプーの爽やかな香りが鼻をくすぐった

言ってしまった

この子に言う“ なんでも ”ほど怖いものはないというのに

ごめんね、未来のA

その場を切り抜けるための言葉に、彼は意外にもすんなり首を縦に振ってくれた

この時の笑顔は今まで見た中でも恐ろしく、含みがあったように思える

切り抜けた代償として、未来の自分に大きな借りを作ったのであった

ジョングギと別れてから、せっかくなら簡単なおつまみを自分で作ってみようかと思い立ちスーパーに立ち寄った

ネットで調べたところ“ 日本酒に合う！超カンタン長芋とオクラの冷奴 ”という記事を見つけたので、必要な材料を調達

普段包丁なんて握ることは滅多にないから少々不安だけど、お酒を少しでも美味しくいただくための努力は厭わない

豆腐は切るだけだし、オクラは冷凍の物を買ったから問題はないだろう

――――と思ったのも束の間

早速危機に直面し、キッチンで絶望中

「なにコレ手ぇ痒い痒い！滑って全然切れないし。超カンタンって言ったの誰だよ嘘つき！千切りとかハードモードなんだけど！！」

ぬるぬると滑ってはまな板から飛び出るを繰り返す長芋、素手で触ったせいか真っ赤になった可哀想なおてて

コイツの持つ威力がこんなに強烈だったなんて……

世の中の主婦や料理人の手はいったいどうなっているのだろうか

「うわーん助けてホソガァー！！Aちゃんがピンチだよぉー！」

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