巡り合った未来 6 ページ6
その衝撃的な言葉に私は頭が真っ白になる。
今……なんて？彼が母を殺した？どうして？何のために……？
様々な疑問が頭の中をぐるぐると駆け巡る。だが、そんなことなどお構いなしに、鶴見中尉は言葉を続けた。
「…正確にいえば、殺しを実行したのは、宇佐美だがね。…ほら、これ。覚えていないか。白くて美しい、人を狂わせる花。お前も一度は見たことがあるんじゃないか」
鶴見中尉は懐から、ある物を取り出す。それをみた瞬間、ドクンと心臓が大きく跳ねて、あの日の光景が蘇ってくる。
そうだ、あの日の出来事が起きる少し前から、見知らぬ男が家に出入りするようになっていた。
その男の顔はよく見えなかったが、口元だけは見えた。口元の横に対照的にあった、二つの黒子。あれは………今思えば、宇佐美上等兵の特徴に、よく当て嵌まっているじゃないか。
そして、その男が手にしていたのは─────……白い花。
「芥子の……花…」
「そうだ。……お前の母を狂わせたのは私だ。私はね、お前が欲しかったんだよ、A」
鶴見中尉は私の頬を優しく撫でると、そのまま私の唇を親指でなぞった。そして彼は私を抱きしめる腕に力を込める。
「ッ！！」
その瞬間、今までぼんやりとしていた記憶がはっきりとした輪郭を帯びていくのがわかった。
鶴見中尉に出会った、あの日。母が死んだ、あの日。
家に頻繁に出入りしていた男……宇佐美上等兵は、いつもの通り母に芥子の実や花を渡す。
以前の賢い母なら、きっと芥子の実を渡されても、不審がって受け取らなかったはずだ。
だが、父が帰ってこないという寂しさや不安から、母は芥子の実を受け取ってしまった。
母はすぐにそれに火をつけて吸う。そして宇佐美上等兵は、それを確認すると、帰っていく。
これが、頭のおかしくなった母の習慣だった。
でも、その日だけは違った。
母は突然、苦しそうに悶え、のたうちまわり始めた。
お母様、と私が駆け寄ろうとするが、それは叶わなかった。宇佐美上等兵が、母と私の間に立ちふさがったからだ。
「……あ……」
「君のお母さん、ちょっと具合が悪くなっちゃったみたいなんだ。だから、お医者さんを呼びたいんだけど…僕、このあたりの病院の場所がわからなくて。一緒に来てくれる？」
宇佐美上等兵は、そう言って人あたりのよい笑みを浮かべていた。だが、私はその笑みに恐怖を覚えた。彼の目は少しも笑っていなかったからだ。
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
