合縁奇縁 ページ44
将校室までもう少し、というところで前方から人が歩いてくるのが見えた。
一人は男性で、日焼けした褐色の肌に、威厳のある髭を蓄えていた。…この人が噂の大佐だろうか。
もう一人は、同じく日焼けした褐色肌の少年で、歳は私と同じか下くらいだろうか。真新しい軍服に身を包み、どこかそわそわとしている。
ちらりと彼らの方を盗み見ると、大佐殿と目が合った。私はぺこりと頭を下げる。すると、大佐殿は軽く頭だけ会釈してくれた。
少年の方は、女である私がこんな所にいるのが不思議なのか、目を見開きながら、穴が開くほど私をじっと見ている。
だがそれ以上、特にこれといって会話を交わすわけでもなく、私達はすれ違った。
するとその直後、後ろから大きな音が響いた。見ると、少年が足を滑らせたのか、床へ寝転んでいる。
私は慌てて彼に手を差し伸べると、「大丈夫ですか」と声をかける。少年は驚いたように私を見つめると、口をパクパクとさせた。
「あ……あいがと、ごわす」
彼はそう言うと、私の手をとって立ち上がる。そして恥ずかしそうに顔を赤らめると、私に向かって頭を下げたあと、そのまま走り去ってしまった。
私はそんな少年の後ろ姿をぼんやりと見つめていたが、ハッと我に返る。前山さんがにこにこしながら、こちらを見ていることに気が付いたからだ。
「今の子、陸軍の軍服だったねぇ。将来、立派な将校さんになるのかなぁ」
「…さぁ…」
「もしかしたら、いつか一緒にお仕事する日が来るかもねぇ」
「そうかもれませんね」
私は前山さんの言葉に、曖昧に返事をする。すると彼は「楽しみだねぇ」と笑った。
「さてと、そろそろ将校室へ行こうか」
「はい」
私は前山さんの言葉に頷くと、再び歩き出した。
まさかこの数年後に、本当に再会して、過ごすことになるなんて、この時の私には想像つかなかった。
終わり
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
