巡り合った未来 5 ページ5
「う、ぐぅ……ッ！！」
焼けるような痛みと痺れが足を襲う。あまりの痛みに思わずその場に崩れ落ちる。どくん、どくんと脈打つような感覚が大きくなっていき、
じくじくと痛む傷口から血液が溢れ出すのを感じる。血を止めようと手で抑えようとするが、指の隙間から血が滴り落ちていった。冷や汗がじんわりと額に浮かんでいく。
尾形上等兵によって撃たれた肩口の傷も痛むが、私の脳味噌を締めているのは脇腹の傷の痛みだった。まるで全身の血が抜かれているような気分だ。
……確か、アイヌの毒矢にはトリカブトが使われていると聞いたことがある。今さっき掠めた矢にも毒が塗られていたのだろう。
「毒か」
鶴見中尉は冷静に私の様子を確認したあと、力なく項垂れる私を見下ろした。そんな彼を私は見上げると、力が抜けるように項垂れた。
血が足りなくなったからなのか。それとも、毒矢のせいだろうか。視界が少しずつぼやけていく。手足が震えだして、まるで自分の体ではないような感覚に陥る。
「つるみ、ちゅ…い………どの……」
「A。お前はここまでよくやった」
鶴見中尉はそう言いながら、そっと私を抱きかかえると、そのまま私の頭を優しく撫でた。
「だから、もういい。私が楽にしてやろう」
「…ッ！？」
その瞬間、息を吞んだ。鶴見中尉は、毒矢が掠めた傷口に銃剣を刺したのだ。彼はそのまま抉るように銃剣を捻ると、ぐりっと傷口を抉った。
「あ”っ……！！」
あまりの激痛に視界がちかちかと点滅する。喉の奥から声にならない声が絞り出される。
私は思わず鶴見中尉の軍服を強く握りしめ、どうして、という気持ちでいっぱいだった。
鶴見中尉は、そんな私を見て微笑むと、そっと私の耳元へと唇を寄せる。
「ここまで私に付いてきてくれたお前に…ご褒美をあげよう」
まるで内緒話をするかのように、彼はそう囁いた。
「お前がずっと知りたいと思っていた、“あの日”のことだよ」
「…あの…ひの、こと…？」
鶴見中尉の言葉に、私は目を見開いた。私がずっと知りたかったこと。
それは母が死んだ、あの日の真実…。私は鶴見中尉に縋るように、彼の軍服をぎゅっと握りしめて、彼の瞳を見つめた。鶴見中尉は、私に向かって微笑むと、口を開いた。
「あの日…。お前の母を殺したのは……私だ」
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
