幸せのカタチ 11 ページ39
「…ん……」
「A！！」
ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が目に入る。そして私を呼ぶ声。
声のした方へ視線を向けると、そこには心配そうな顔をした鯉登少尉の姿があった。
私はぱちぱちと瞬きをしたあと、ゆっくりと身体を起こす。すると身体中がズキズキと痛んだ。思わず顔を顰める。
「月島ァ！Aが目を覚ましたぞ！！」と鯉登少尉は部屋の外へと声をかける。
するとすぐに月島軍曹が部屋へ入ってきた。そして私の顔を見るなり、驚いたように目を見開く。そして、「医者を呼んできます」とだけ言い残して部屋から出ていった。
「鯉登、少尉殿……。ここは一体…？」
「ここは軍事病院だ。あの後、お前は意識を失って倒れたんだ。……一週間も寝ていていたんだ」
「一週間も……」
鯉登少尉はそう言うと、私の頬に触れた。温かい手が心地良い。私はその手に自分の手を重ねる。
……生きて、いる。
そう実感した瞬間、涙が溢れてきた。
「なッ……どうした！？傷が痛むのか！？」
ぽろぽろと涙を流す私を見て、鯉登少尉は慌てたように私の身体を起こす。そして背中を優しくさすってくれた。
私は彼の胸に顔を埋めると、声を上げて泣いた。鯉登少尉は何も言わずにただ抱きしめてくれた。その温もりが余計に涙を誘う。
「い、いいえ……。違う……違うんです。ただ…目覚めるまでの間、長い夢を、見ていたような…気がして…それで……。どうしてか分からないけれど、すごく悲しいんです……」
私は嗚咽混じりにそう言うと、鯉登少尉は黙ったまま私の頭を撫でた。そしてそのまま私を抱きしめる。
しばらくそうしていると、廊下の方から慌ただしい足音が聞こえてきた。月島軍曹が医者を連れて戻ってきたようだ。
医者は私の顔を見るなり、驚いたような表情をした。そしてすぐに私の身体に触れると、脈や体温を測り始める。
私はされるがままになっていたが、やがて診察が終わると再び布団に寝かされる頃には、もうすっかり気分も落ち着いていた。
医者の話によれば、毒の応急措置が的確だったこと。あと少し遅ければ、手遅れになっていたかもしれないということ。そして、私の身体はあと数カ月もすれば完全に回復するということ。
医者は私に安静にするようにと念を押したあと、部屋から出ていった。その後、月島軍曹も私達に気を遣ってくれたのか、「仕事がある」と部屋を出ていった。
部屋には鯉登少尉と私の二人だけになった。
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
