幸せのカタチ ページ29
��どうしたらいいかわからない
私はまっすぐと鶴見中尉殿へと手を伸ばそうとしたところで…ぴたりと無意識に動きが止まった。
鶴見中尉殿が不思議そうに「A？」と私の名前を呼ぶ。
「…あ…」
どうして自分の手が止まったのか、わからない。
早く伸ばさなきゃ。そう思うのに、私の身体は動かない。
こんなときに迷っているとでも言うのか。
早くしないといけないのに……！
私は慌てて手を動かそうとするけれど、全く言うことを聞かない。指先がカタカタと震えるだけだ。
何か言わなければ。
口を開くけれど……言葉が出てこない。どうしよう、どうしよう……！
「A…ッ！」
私が焦っていると、ふと私の手に温かいものが触れた。
それは私の手をぎゅっと包み込むように握ると、そのままゆっくりと私の指を開かせる。そして開いた指の隙間にするりと入り込み、私の手のひらをぎゅっと握った。
鯉登少尉の手だ。
絶対に私を導いてくれる、この力強い手。
そんな手が、私を離さない、行かさせないというばかりに、私の手を力強く握っている。
私は思わず顔を上げ、彼の方を見た。鯉登少尉は真剣な眼差しで私を見つめている。
そのとき、私の心に決意が芽生えた。先程までの不安が嘘のように消えていく。私の心臓が大きく鼓動し始めた。
「…鶴見中尉殿！申し訳ありません、私は、」
貴方にはついていけません。
そう言おうとした瞬間、強い力で伸ばしていた手が掴まれた。驚いて、そちらを見ると……鶴見中尉が私の手を掴んでいた。
「………え？」
状況が理解できず、私は思わず間抜けな声を出してしまう。あ、と思ったときには、もうすでに遅く、鶴見中尉は私の手をぐっと引き寄せると、そのまま私を引っ張り上げた。
「Aッ！！待て…ッ！！」
下にいる鯉登少尉が慌てて私に手を伸ばす。だけど、鶴見中尉は私を引き寄せたまま、くるりと後ろを向いて歩き出した。私は鶴見中尉に引っ張られるまま、彼の背中を追いかけるように歩く。
「つ……鶴見中尉殿ッ！！放してください！私は、貴方には……ッ」
私が叫ぶと、鶴見中尉は振り返ることなく答えた。
「放さない。絶対に」
鶴見中尉のはっきりとした声が、私の耳に届く。私を掴む手は力強く、簡単には振りほどけそうにない。
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
