私の一番大切な彼のこと 3 ページ24
「……なんてこともあったな」
6ヶ月後。
───────函館湾。
鯉登少尉は、海を見つめながらそう呟いた。その視線の先には、海へと足をつけた月島軍曹の姿がある。
あの後、私は函館の病院で目を覚ました。最悪、死んでいたと思っていたから、目覚めた時は本当に驚いた。
鯉登少尉はというと、私が目を覚ますまでずっと側でいたらしく、私が目覚めた時、彼は「キエエエッ」とあの謎の叫び声をあげ、たいそう喜び、お医者様からお叱りを受けていたのは記憶に新しい。
月島軍曹も鯉登少尉も重傷だったが、命に別状はなく、数日経つ頃には二人ともピンピンしていた。
そして、鶴見中尉の言っていた手紙の件だが……。
そこには、母を失ったあの日のことが綴られていた。母が私に暴力を振るっていた原因は、アヘンの製造源である芥子であること。それを渡していたのは宇佐美上等兵であること。そして、それを主導していたのは…鶴見中尉であること。
その目的は、私を孤立させることで、自分という愛情を注ぎ、手駒にして操りやすくするためだったらしい。
手紙にはそう書かれていた。
私はこの事実を知ったとき、驚くとともに、納得もした。
鶴見中尉が私に優しくしてくれたのは、すべてこのためだったのだと。
「……恨んでいるか。鶴見中尉殿のことを」
鯉登少尉は海を見つめたまま、私にそう尋ねた。
もちろん、鶴見中尉のことを恨む気持ちがないと言うのは、嘘になる。
だけど、彼も奪われた側の者だ。きっと彼は様々な要因が重なって、あぁなってしまったのかもしれない。
「…確かに、恨んでいないとは言い切れません。ですが…私にはあの方が全て嘘をついていたようには思えないんです」
私がそう思いたいと願っているだけかもしれないけれど。
ずっと秘密にしておけばよかったのに、最後の最後で私に真実を打ち明けてくれた。
それはきっと、鶴見中尉なりのケジメだったのではないだろうか。
私がそう言って微笑むと、鯉登少尉は少し複雑そうな顔をした後、そうか、と小さく呟いた。
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
