巡り合った未来 18 ページ18
「この私が愛する女を、間違えるわけがないだろう」
鯉登少尉の言葉に、私は目を見開いた。
────愛する女。
その言葉に、胸がきゅっと締め付けられるような感覚に陥る。
どうして。どうして、そういうことを簡単に言ってしまうのだろうか。
「お前がそのような態度を取るのならば、私にも考えがある」
鯉登少尉はそう言うと、私の頬から手を離した。不思議に思ってその様子を眺めていると、肋骨服の胸飾りに手を入れ、何かを取り出す。
「これに見覚えあるだろう」
それは、白いリボンのついた簪だった。
鯉登少尉が、樺太で私に渡そうとしてくれたもの。だけど、臆病な私は、受け取れないと断ったもの。
まさか、あの日からずっと持ち歩いていたのだろうか。
私が言葉を失っていると、鯉登少尉は簪を見せびらかすように私に見せた。
「いまからこれを壊す」
「はッ……？」
何を言い出すんだ、この人は。
鯉登少尉のその言葉に、私は思わず声を上げる。
彼はそんな私を見ると、怪訝そうな顔をした。
「なんだ、何か文句でもあるのか」
「えッ……いや、その……」
私は鯉登少尉の言葉に戸惑いながら言葉を濁した。いくらなんでも、壊す必要はないだろう。そう伝えようとしたが、鯉登少尉の鋭い眼光に気圧されてしまい、何も言えない。
「これを私が落として踏んで壊したところで、何も貴様には問題はないだろう。貴様は、私のことなど知らないのだからな」
鯉登少尉はそう言うと、腕を大きく振りかぶる。彼の大きな手の中にある簪が、きらりと光った。
別に、私は関係ないのだから…止めなくていい。止めなくていいはずなのに。
──────“これが私の…気持ちだ。いつも世話になっている礼も兼ねての、だが…”
樺太での彼のあの言葉と、こちらを見つめる熱い眼差しが脳裏に蘇る。
嫌だ。
それを壊されてしまったら。今まであったことを全て、否定されてしまうような気がする。
壊さないでほしい。
そう本能が告げていた。
気がつくと私は無意識のうちに、鯉登少尉の腕にしがみついていた。
「まッ……待ってください！」
私がそう言うと、鯉登少尉は驚いたように目を見開く。
「なんだ、止めるのか」
鯉登少尉はそう言いながらも、振り上げた腕をゆっくりと下ろした。私はほっと胸を撫で下ろすと、掴んでいた腕から手を離す。そして、簪を持つ鯉登少尉の手に自分の手を重ねた。
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
