巡り合った未来 17 ページ17
「ッ……はな、して……ください…」
私は息を切らしながら、鯉登少尉から逃れようと身を捩った。しかし、彼は私を離すまいとさらに強く抱きしめる。まるで逃がさないと言っているようだった。
「……頼むから、逃げないでくれ」
懇願するようなその声に、胸が締め付けられるような気持ちになる。私は、彼の腕の中で静かに俯いた。
「A……会いたかった」
鯉登少尉はそう言うと、私の首筋に顔を埋める。私はぴくりと身体を震わせた。
「……ッ」
「私は…もうお前に会えないのかと思っていた…」
鯉登少尉はそう言いながら、私を抱きしめる力を強めた。彼の温もりが背中越しに伝わってくる。その温かさに、思わず涙が出そうになった。本当は嬉しいはずなのに、素直に喜べない自分がいる。
「……どちら様ですか」
私は、絞り出すようにそう言った。鯉登少尉は驚いたように目を見開くと、私の顔を覗き込んで来る。「何を言っているんだ」とでも言いたげな表情だ。
「……覚えていないのか？あぁ、前と違うから分からないのか。私だ、鯉登音之進。Aのよく知っている男だぞ」
「存じ上げません」
私がそう言うと、鯉登少尉は悲しげに眉尻を下げた。しかし、すぐに真剣な表情に戻ると、「嘘を吐くな」と私を見つめる。
「お前はAだろう？何故そんな嘘をつくんだ」
鯉登少尉の言葉には、怒りが含まれていた。
「人違いではありませんか。私は、あなたの様な殿方と知り合った記憶はありません」
「ならなぜ、先程逃げた？私のことを見て逃げ出したではないか」
鯉登少尉の言葉に、私は思わず言葉に詰まった。
確かに、あんな反応をすれば、自分が彼の知り合いだと肯定しているようなものだ。
「それは…出たら軍人さんが居たんですもの、驚いて逃げてしまいますよ。まさか、追いかけてくるとは思いませんでしたし……」
「お前のあの走り方は、一般市民の女性とは違った。軍人のそれだった」
「……気のせいでは？同じような走り方の女性ぐらいいても、」
私がそう言いかけると、両頬に手が添えられた。そのままぐいっと上を向かされる。
「A」
鯉登少尉は、私の名前を呼ぶと、じっと私を見つめた。彼の瞳が、私を捕らえて離さない。
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塩わさび(プロフ) - 名無し36195号さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！そう言っていただけるなんて嬉しいです☺️杉元編ができたら、お手隙の際に読んでいただければ幸いです。 (3月3日 19時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し36195号(プロフ) - 感動しました。本当に素敵な作品をありがとうございます。ぜひこれからも執筆してください。塩わさびさんの作品をもっと読みたいです。杉元のお話待ってます！ (3月3日 15時) (レス) @page44 id: 83cc8cc69d (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました！！またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします！🙇♀ (2月28日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜姫(プロフ) - 完結お疲れ様でした！とても素敵な小説をありがとうございました😊鯉登少尉と幸せになれてよかった！ (2月28日 21時) (レス) @page44 id: b1f5f5fccb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 飛炉さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました☺またどこかでお会いしましたら、宜しくお願いいたします。 (2月26日 19時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2024年2月17日 17時
