お見舞い 2 ページ9
「おいしい？」
「うんッ！」
彼は幸せそうに笑った。
「……Aちゃんは、いつ帰るの」
「もうそろそろ帰ろうかなって思ってるよ」
「そっかぁ」
「寂しい？」
そう聞くと、彼は少し考える素振りを見せた後に、小さく「……ちょっとだけ」と答えた。
「私ね、今度旭川に異動になったの。だからしばらく会えなくなると思う」
「えっ！？せっかく会えたのに！？」
「うん。ごめんね」
私が謝ると、二階堂くんは目に見えて落ち込んだ表情を見せる。
「また会えるよね？」
「もちろん。だから、二階堂くんも歩く練習頑張ってね」
私が微笑みかけると、彼は安心したように息をつく。そして、私の手をギュッと握ってきた。
「うん、俺がんばる！！」
「モルヒネ盗んじゃだめだよ」
「……」
「二階堂くん？」
「…また会おうね、Aちゃん！」
「うん」
誤魔化したな。
名残惜しそうに私の手を離すと、彼は病室の入り口まで見送ってくれる。彼と別れ、兵舎へと戻る。長い廊下を進んで、角を曲がると月島軍曹がいた。彼は私の姿を見ると、「A」と言って近づいてくる。
「頼んでいた件はどうなった」
「はい。二階堂くんは元気でした。もうすでにある程度歩けるようになっていましたし、義足を使いこなすのももうすぐだと思います。モルヒネも飲んでいないみたいですし……」
「そうか」
彼は無表情でそう答える。だが、どこかホッとしたような表情だ。きっと二階堂くんのことを心配していたんだろう。
「Aから言えばあいつもモルヒネを飲まないだろう」
「………」
そうだろうか。二階堂くんならやりかねない気がする。だが、月島軍曹が言うならきっとそうなのだろう。
「では、失礼します」
「あぁ。お前もあまり二階堂に近づくなよ」
「はい」
私は彼の言葉に返事をしながら、その場を離れた。
噂によれば、二階堂くんの足を奪ったのは、あの土方歳三らしい。そして、彼の片割れを奪ったのは、希に恨めしそうにつぶやいている“不死身の杉元”。
「不死身の、杉元…」
鶴見中尉殿も、あの尾形さんがその男にやられたとおっしゃっていた。その男のことについて語っている鶴見中尉は、生き生きとしていて楽しげだった。
あの黒い瞳が、初めて宝物を見つけた少年のようにキラキラとしていたのだ。
鶴見中尉殿にあんな表情をさせるとは、一体、彼はどんな人物なのだろう。
「…気をつけなきゃ」
いずれにせよ、鶴見中尉に楯突くのなら容赦しない。
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塩わさび(プロフ) - あもさん» ありがとうございます。鯉登とは光属性なので、一応、のんびりほんわかな雰囲気を意識してます…！ (2023年1月9日 1時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんとの絡みが面白くて可愛くて、ほっこりします／／／ (2023年1月3日 8時) (レス) @page29 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 本作品でもコメントありがとうございます。鯉登くんもお好きなんですね！最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (2022年12月31日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんルート！！！鯉登さんも好きなので／／／ (2022年12月31日 20時) (レス) id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2022年12月31日 18時
