弾より速く 2 ページ42
「謝罪の言葉が聞きたいわけではないッ！」
鯉登少尉は私を怒鳴りつける。その言葉に、思わずビクリと肩を震わせる。
「鯉登少尉。その辺にしろ」
「じゃっどんッ……！」
「大丈夫だ、鯉登。彼女はきちんとわかってるよ。……“Aちゃん”は“いい子”だから……ね？」
鶴見中尉の底なしの黒い瞳が、私を捉える。
その目を見た瞬間、私は背筋に悪寒を感じた。私はゴクっと唾を飲み込み、小さく震えながらも、しっかりと頷く。
すると、鯉登少尉は渋々といった様子で手を離してくれた。私は、乱れてしまった軍服を整える。
「美しい死に様を見せてもらったぞ。稲妻強盗と蝮のお銀」
鶴見中尉殿の興味は、もう私から移ったようで、視線を外すと、地面に転がったままの二人の亡骸に視線を向け、満足そうに微笑んだ。
お銀は頭だけになってもなお、稲妻へと微笑んでいる。まるで、二人だけがこの世界から切り離されて、楽園へ行ってしまったような、そんな不思議な感覚を覚えた。
「…………いいなぁ」
無意識のうちに、口から溢れていた言葉にハッとする。慌てて口を塞ぐも、それはしっかりと鯉登少尉の耳だけには届いていたらしい。彼は眉間に皺を寄せ、怪しげな目つきで、じっとこちらを見下ろしてきた。
私は気まずさから、サッと顔を逸らす。
こんな時に不謹慎だと思われるかもしれないが、先程の二人が口付けを交わした姿を思い出して、羨ましいと思ってしまったのだ。
私は、ゆっくりと視線を下に落とす。自分の唇に触れてみると、そこは少し乾燥していて、かさついていた。
─────Aちゃん。
少年の声が、また脳裏に響く。
どうして今になって、彼のことを思い出すのか、自分でもよくわからない。ただ、思い出すと、何とも言えない寂しさに襲われた。
「……おい、」
「鯉登少尉！お銀の荷物を調べろ！本物の刺青人皮を持っているかもしれない」
鯉登少尉が何かを言いかけたが、それを遮るようにして、鶴見中尉が大声で叫ぶ。
彼は、慌てて返事をすると、お銀の荷物へと手を伸ばす。彼が荷物に触れようとしたその時、荷物が動き出し、「おぎゃーッおぎゃーッ」と泣き声をあげた。
私達は驚いて、思わず後ずさる。
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塩わさび(プロフ) - あもさん» ありがとうございます。鯉登とは光属性なので、一応、のんびりほんわかな雰囲気を意識してます…！ (2023年1月9日 1時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんとの絡みが面白くて可愛くて、ほっこりします／／／ (2023年1月3日 8時) (レス) @page29 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 本作品でもコメントありがとうございます。鯉登くんもお好きなんですね！最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (2022年12月31日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんルート！！！鯉登さんも好きなので／／／ (2022年12月31日 20時) (レス) id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2022年12月31日 18時
