害虫駆除 ページ30
それから数日後。
「奇妙な刺青？」
「あぁ。あっちの方に東松屋油問屋っていう油問屋があるだろ？あそこ、実は夜は大きな賭場になってるんだよ。だけど先日、妙な客が現れたらしくてさぁ」
小樽の花園地区にある団子屋で、店主は私にそう話す。店内には客は少なく、私ともう一人、“日泥”と書かれた半纏を着た若い男性のみだった。
「何回も賭けに負け続けて、借金が膨れあがったときに、カタとして、妙な皮を置いてったんだと。動物の皮でもねえ上に、妙な倶利伽羅悶々が入ってたみてぇでさ。なんでも、その客が言うにゃ、『欲しいって言ったやつが現れれば高額で売るのもよし、自分でほかの入れ墨を集めて宝探しをするのもよし』なんだと」
「へぇ」
「宝探しっつったって、お伽噺だけの話だろうによ。賭場の奴ら、すっかり信じ込んじまってるみてぇだ。お嬢ちゃんは、宝探しに興味あるかい？」
「いいえ、全く」
私は、即答した。
「だよな。ま、俺もこの話は信じちゃいねぇけどな。ただ、もし本当だとしたら面白そうだと思ってよ」
「そうですね」
私が相槌を打つと、店主は満足げに微笑む。私は、持っていた串を皿の上に戻し、側においてあった風呂敷を両手に持って立ち上がる。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「そりゃよかった。また来てくれよ。親父さんやご兄弟にもよろしくな」
勘定を払って、店を出る。
稲妻強盗と蝮のお銀をおびき寄せるため、私達は鶴見中尉が考えた計画を実行していた。
まずはじめに、月島軍曹が客として、小樽で一番大きな賭場…東松屋商店という油問屋で負け続け、借金を作る。そして、江渡貝弥作が作った贋物を借金の担保として置いていく。その際に、さり気なく金塊を匂わすようなことを言って去る。
そうすれば、必然的に稲妻強盗は現れる。仮にもし現れなかったとしても、金塊のことを知っている者も誘き寄せられるので、一網打尽にできる…というのが鶴見中尉の考えだ。
私はと言うと、噂がしっかりと広まっているかどうかを確認するために、こうして街まで足を運んだのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
塩わさび(プロフ) - あもさん» ありがとうございます。鯉登とは光属性なので、一応、のんびりほんわかな雰囲気を意識してます…！ (2023年1月9日 1時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんとの絡みが面白くて可愛くて、ほっこりします／／／ (2023年1月3日 8時) (レス) @page29 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 本作品でもコメントありがとうございます。鯉登くんもお好きなんですね！最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (2022年12月31日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんルート！！！鯉登さんも好きなので／／／ (2022年12月31日 20時) (レス) id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：塩わさび | 作成日時：2022年12月31日 18時
