本当の心 5 ページ19
「私を馬鹿にしているかとさえ思ったこともあった」
馬鹿にしていたつもりはない。だが、彼がそういうのだから、私の笑みはそういう風に見えていたのだろう。
そう思っていると、鯉登少尉は「だから」と続けて言った。
「これからは、本当のお前を見せてくれんか」
「……は？」
私は思わず間抜けな声で聞き返してしまう。
「お前は、私の前でだけは、ありのままの表情でいろ。それでも無理だというのなら、私がお前が感情を引き出すのを手伝ってやる」
「……」
真っ直ぐで、揺らぎのない言葉だった。きっと、彼なりに私のことを思って言ってくれているのだろう。だが、それが何を意味しているのか理解できず、困惑してしまう。
「……どうしてですか？私なんかのために」
「私がそうしたいと思ったからだ」
どうして、そこまでしてくれるのだろう。私がそう問うと、鯉登少尉ははっきりと答えた。その答えを聞いて、ますます混乱した。理由になっていない。どうして、彼はここまで必死になるのか。
「A。……いいや、A」
────Aちゃん。
鯉登少尉は、私の耳元で優しく囁くように名前を呼ぶ。脳裏に、幼い少年が浮かび上がっては、泡のように消えていった。
「言いたいことがあるなら、言葉にしないと伝わらんぞ」
「……」
そんなこと、言われたのは初めてだった。今まで、誰にも気づかれなかったのに。気づいてほしくもなかったはずなのに。
「……私は」
いつも通り、断ればいい。考える必要はない。鶴見中尉殿がおっしゃった言葉を、今までどおり続けていればいい。
彼は、私をいつも正しい道へ勧めてくれるから。
だから、鯉登少尉の言葉に悩む必要なんてないはずなのに。
それなのに、どうして私はこんなにも悩んでいるんだ。
「………善処、します」
やっと私の口から出てきた言葉はそれだけだった。鯉登少尉は私の返答を聞くと、「なんだその曖昧な返事は……」と呆れたようにつぶやいた。そして、「まぁいい。あとそれから…」と続けた。
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塩わさび(プロフ) - あもさん» ありがとうございます。鯉登とは光属性なので、一応、のんびりほんわかな雰囲気を意識してます…！ (2023年1月9日 1時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんとの絡みが面白くて可愛くて、ほっこりします／／／ (2023年1月3日 8時) (レス) @page29 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 本作品でもコメントありがとうございます。鯉登くんもお好きなんですね！最後まで楽しんでいただけると幸いです。 (2022年12月31日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 鯉登さんルート！！！鯉登さんも好きなので／／／ (2022年12月31日 20時) (レス) id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2022年12月31日 18時
