37*いち ページ37
俺は何をされているんだろうか。
何日もここにいるけど、今日で何日経ったのかは忘れてしまった。
会社にも連絡せずに何日も、しかも無断で。
ああ、会社クビになるだろうな。
転職出来るかな、1年も経たずにクビってもう訳ありだよな。
あーあ。
「・・・お兄ちゃん」
隣にいる夏樹が弱弱しく俺を呼んだ。
何で夏樹だけでも離してやれなかったのだろうか。
今までは俺一人が犠牲になって、夏樹には一切被害を加えなかったのに。
どうして夏樹までこんな目に合ってしまうんだろう。
折角俺はこの家を離れて、夏樹の学費と家を稼ぐために頑張ったのに。
どうして俺はこんな家に生まれたのだろう。
「先輩さんと電話したけど、駄目だった」
「・・・そうか」
「お兄ちゃん」
私たち、死 ぬのかなと力なく笑う。
いっそのこと死 んでしまった方が、楽なんだろう。
こんな家で、両親の機嫌をうかがいながら、暴力受けて過ごすくらいなら。
たった一瞬の痛みの方が、きっと耐えられる。
「・・・駄目だ。俺、こんなとこで死 ねないよ」
だって好きな人がいるから。
小さいころから俺の事を好いてくれた大事な妹、夏樹。
俺と一緒に入ってきた同期の仲間、塩沢と水島。
俺のことをいちから全部仕事の指導をしてくれた、山田先輩。
俺が勝手にライバル認識しているけど、仕事では凄く頼りある金田部長。
そしてこの世で一番好きだという感情を持てた相手、佐倉先輩。
まだ感謝も伝えてないのに、死 ぬなんて、絶対に嫌だ。
「勿論、夏樹だって死 なせない。絶対ここから出てやる」
「・・・そうだね。お兄ちゃんは、諦めない人間だもんね」
「なーにごちゃごちゃ言ってんだよお前ら」
倉庫の扉を開けたと同時に、俺らを連れ去った奴が現れる。
「おい柚希。お前勝手に家を出やがって。ただで済むと思うなよ？誰の許可を得て出てんだよ」
「・・・分かったから、夏樹は関係ないだろ」
「その口の利き方はなんだよ！そんなんで会社やってけてんのか！・・・ま、こんだけ無断で休んでるから、クビになるか」
はっと嘲笑いながら、俺を見下ろしてから踏みつけた。
夏樹が小さく悲鳴を上げると、夏樹にも同じことを繰り返した。
こんな生活がしばらく続いた。
「・・・」
励ましあって生きていた俺ら兄妹も、一言も話さないほどに余裕が消えてしまった。
壊れてしまった。
38*壊れた心を繋ぎとめるには→←36*這い上がってマイヒーロー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルリアイス(プロフ) - 夢魔さん» ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2020年1月11日 0時) (
レス) id: 0fcb288ad8 (このIDを非表示/違反報告)
夢魔 - 凄く面白かったです！ これからも応援してます！！ (2020年1月10日 23時) (レス) id: f6b046dcfc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルリ☆アイス | 作成日時：2019年10月28日 22時
