胃薬が二十一錠 ページ27
『____…か、はっ…』
息を吹き返した。
僅かだが、呼吸をしている。
『は…ひゅ…ッ』
「Aさん…?!しっかりして下さい!ゆっくり、息を…ッ」
『ぁ、ぁ…ぁぁ…ぁぁぁぁああああ''あ''あ''ッ』
突然苦悶の表情を浮かべ、か細い声で叫びをあげる。
ぎぎぎ、と動かないはずの左腕を伸ばし、何かを掴もうとする。
しかし、その手は
「あぁ…ッ、なんで…っ」
「な、ぜ…?」
人間とはかけ離れた長く鋭い爪。
縦に割れた瞳孔。
犬歯とも違う、鋭い牙。
「なん…何で、Aが…鬼…?」
「何でッ!コイツは血を浴びてな____」
ふと、全員の頭の中に出来事が蘇る。
そう。
それは、つい最近。
「Aが…攫われた時に…転んだって…」
「…!傷口は…!」
その時に治療をしたしのぶは、膝に巻いてある包帯を引き剥がす。
「…ぁぁ…ッ、そんな…っ」
その時に出来た傷口がどくどくと脈打ち、比較的新しく出来た脇腹の傷も同じようになっていた。
「何だよ…Aが倒した鬼ってのは…ヤツの血を引いてたってのか…?」
「だが…っ、十二鬼月にあるはずならば目の中に文字が…ッ!」
急いでAが斬り落とした鬼の首を探すも、既に塵と化していた。
誰もが絶望の底に叩き落とされる中、生暖かく気味の悪い風が吹く。
琵琶の音が微かに響く。
誰もが知る嫌な気配。
『ぅぅぅぅぅ''ぅ''ぁぁぁぁああああ''あ''ッ』
突如、Aが周囲にいた者達に向かって刀を振り回す。
全員は咄嗟にその場を離れ、Aと距離を取った。
『はぁ''…ぁ''ぁ''…ッはぁ''ぁ''ぅ''ぅ''…っ!』
すると
「…そうだ。それでいい」
不気味な程によく響く声。
風に揺れる黒髪に、縦に割れた瞳孔が覗く紅い瞳。
その場に膝をつくAの左目に手を添え、薄く笑う。
「Aちゃん、迎えに来たよ」
「お前が…新しい…鬼か…」
現れた二人の濁った双眸には
''上弦 壱''と''上弦 弐''の文字。
名を____黒死牟、童磨。
「十二鬼月…ッ?!なんでここにッ」
「勿論、この子を回収する為だぜ?」
虚ろな右目から涙を流すAは左手を伸ばし
『ご、め…なさ…ぃ』
懺悔の言葉を残し、鬼舞辻達と共に消え去った。
「ぅそ…だ…」
絶望に包まれた空気が漂い、鬼殺隊員達に重くのしかかる。
いつの間にか咲いていた赤黒い彼岸花が、静かに揺れた。
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ぷりっつ - 夢主ちゃんのスカートが膝より高い. ..ゲスメガネ呼んでこよう...チャキッ← (2021年5月9日 2時) (レス) id: 8a7ce8997d (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - 絵に一目惚れしました……!!面白い!すごい!!! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
ガコ - この小説、すごく面白いですね! あと、33の時、すごくカゲロウテイズっていう歌に似ていますね! (2019年11月25日 0時) (レス) id: 8244513a71 (このIDを非表示/違反報告)
もやし好きのもやし(プロフ) - コメントありがとうございます!素晴らしい作品だなんて勿体無いお言葉です…!続編もよろしくお願いいたします!! (2019年10月5日 8時) (レス) id: 6a4e808260 (このIDを非表示/違反報告)
緩莓 - 本当に最高です!!!こんなに素晴らしい作品に出会えて光栄です(´;ω;`)更新お疲れ様です!続編も読みます!これからも頑張ってくださいね! (2019年10月5日 7時) (レス) id: 6806c82317 (このIDを非表示/違反報告)
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