ちょっとリアルなトリップモブ

近くて遠い5(安室side) ページ45

久しぶりにポアロに戻ってきたら、女子高生や女子大生に呼ばれて中々中の仕事が出来ずにいた。
朝は梓。午後はAと、ものすごく迷惑をかけた。
午後、そのAが出勤してきた時は驚いた。
伊豆高原で事件に遭遇した際に蘭から聞いていたのだが、本当に痩せており目に見えて疲れていた。
安室ががいない間に何があったのかと聞きたかったが、来店してくる学生たちに阻まれ話をする事が出来ずにいた。
そしてやっと閉店するも、学生たちからの誘いを断っている間に閉店作業を終わらせたAが既に帰り支度をしていていたことには驚いた。
そして何食わぬ顔でそのまま帰ろうとしているAを何も聞かぬまま帰すわけにはいかないと、咄嗟に腕を掴む。
腕を掴まれ驚いたAはこちらを向いてくれたが、安室の顔を見ては表情を暗くした。
どうしても、こうやって話せるタイミングが何かと注意する事が多いので致し方ないのだろうが、それを寂しく感じる。

警察庁のゼロとして、潜入捜査官として、何でも完璧にこなそうとは思うが、安室も1人の人間だ。限界はあるしできない事もある。
なので、迷惑かけた事の謝罪と、なぜそんなにやつれてしまったのかを聞こうとしたが、上手くいかない。
組織として情報を抜き取る為に女性の扱いなど慣れているものの、彼女に対してはなかなかうまくはいかない。
それでよく公安が務まるなと自分に言いたい。

そして痩せた彼女の頬に触れると、安室の手から逃れるようにのけ反り離れてしまった。
今までいろんな女性を相手にしてきたが、こんな拒否反応されたのは始めてで驚いたが、触れた手がむなしく宙をさまよう様はむなしく感じた。

調査対象の彼女に近づく事も出来ず、拒否される程嫌われているのかと頭を過った時。
急に彼女に手を振り払われ、慌てて出て行く彼女の腕を再度捕まえる。

「急にどうしたんです！？」

「離せ！急いでんの！」

いつもと違う彼女の口調にビックリするも時間を見て急いでいる理由を察し車で送ると告げる。
すると今まで見た事のない程目を輝かせ「お願いします！」と懇願し、初めて見る彼女に頬が緩むのが分かった。

明日は彼女も朝からポアロがあったはずだ。自分はこれから都庁に行かねばならない。
まだまだ彼女との距離は遠いが、せっかく話す事が出来たのだ。もっと距離を縮めたい。
終わったら連絡しろと言ったものの、あの様子では連絡してくるのは遅そうだと思い、終わる時間を見越して迎えに行こうと考えた。

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