ちょっとリアルなトリップモブ

近くて遠い2 ページ42

腕を取られた事に驚き振り向くと、険しい表情をした安室がいた。
その顔を見たAは――あぁ、また怒られる。と瞬時に理解した。
今日も今日とて安室と会話を仕事内容以外で会話をしていない。どれだけ考えてもAには怒られる要素がわからない。
まぁいつも怒られている内容も「なぜ言わない」「連絡してこない」「相談しない」と同じなので今日もそれだろうと身構える。

「仕事をまかせっきりにしてしまってすみません」

まさか謝罪されるとは思わず、目を点にする。
確かに裏方の仕事はほぼAがしたが、その分安室がホールでの仕事をしていたので謝罪される必要はない。
寧ろ今日はあっちこっちに呼ばれて大変だったのは安室の方なのだ。

「謝る必要はありません。それを言うなら私もホールを安室さんにまかせっきりにしてしまっていたのですみません」

だから気にする必要はないと言うが安室の表情が変わる事はない。
それどころかどんどん険しくなっていく。

「僕がいない間に何かありましたか？」

コナンにも聞かれた内容だ。
なので同じように答えを返す。

「ダイエットを頑張り過ぎただけですよ」

こればっかりは安室に知られたくはない。
知れば安室は自分のせいだと思うだろうから。
そう言って掴まれている腕をそっと外す。

が、逆にその手を掴まれてしまった。

「どうしてそうやって何も言わないんですか？」

掴まれている腕が痛い。

「安室さん痛いです」

そう言うと少し力を緩めてくれるが、離してはくれない。
気付かれないように静かにため息をつく。
今日に限ってコンビニのアルバイトがあるのだ。

「ちゃんと話しているじゃないですか。
梓さんが早退したり。マスターがこれない日もメールですが連絡もしている筈です」

メールなので返信が遅い過ぎるのは致し方ないと思う。
安室に怒られてから極力連絡はするようにしていた。電話はとってくれないので全てメールでの連絡だが。

「そうではありません。仕事ではなく、あなた自身の事を言っているんです！」

「は？」

――おっと、心の声が少し漏れた。・・・疲れてるな。

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