泡沫夢幻 -弐-【わたどう】

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それから数日後





厨房の作業が早く終わったので、
店の方の様子を見に行こうと足を進めたら…、



店先で、椿が誰かと話しているのが見えて、
思わず隠れてしまった。









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椿｢いつもありがとうございます。｣

栞｢…いえ、私は、椿さんのお菓子のファンなので…！｣






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…あれは確か…、長谷屋の栞さんだ。


何度か面識はあるが、
椿と二人で話しているところを見るのは初めてだった。








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椿｢…では、また来月、よろしくお願いします。｣

栞｢はい。私…、とても楽しみにしています！｣









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何か、会う約束をしているみたいだった。







＿＿＿＿…まさか…、…デートの…、約束…？









とても幸せそうな笑顔の栞さん。

あれは、どこからどう見ても恋をしている女の子の顔だ。
椿もそんな彼女に優しく微笑んでいる。





…私、あんな柔らかい椿の表情見たことない。









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…そうか、
椿と栞さんは、もうそんなに親密な関係だったんだ。








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女将さんからも随分と気に入られているようだし、
きっと私との結婚より多くの人が祝福する。



椿のためにも、店のためにも絶対その方がいい。



こうなれば、どう考えても邪魔者は私だ。









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……でも、もしかしたら椿は、
自分を選んでくれるんじゃないかって、

どこかで、そんなありもしない期待を抱いていたんだ。








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｢……っ………｣









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私は、これ以上、

楽しそうに話をする二人を見たくなくて、
もう一度厨房に戻った。









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