泡沫夢幻 -弐-【わたどう】

□70 ページ25

**









杉田｢…わーーー！！なんだこれ！！｣

七桜｢……酷い…｣


阿部｢3時間後には催事が始まるのに…、
もう搬入しなきゃ間に合わないですよね…！？｣


山口｢……なんでこんなことに…、
…杉田！早く椿さん呼んでこい…！｣








.









翌日、わらび餅を搬入するために厨房に行くと、
昨日準備したわらび餅が床に散乱していた。





………やっぱり、これは絶対あの人の仕業だ…。









.









今日子｢安心してください皆さん。
お菓子は、別にちゃんと用意してありますから。

そんな小娘が作ったお菓子なんかより、ずっといい物よ、｣





七桜｢…！｣



今日子｢…ダメねAさんも。
職人の作るお菓子をちゃんと管理出来ないようじゃ、
この店の女将は務まらないわよ？｣








.








｢……どうして貴方みたいな人が、
この店の女将なんでしょう。｣



今日子｢…なっ…！？｣








.









…この人は、自分の利益のためなら手段を選ばない。


それは椿に言われて散々分かっていたつもりだったけど、
いざそれのために利用されたお菓子を目の前にすると、
怒りと哀れみの感情が湧き上がってくる。









.









椿｢…これはどういうことですか。｣





今日子｢Aさんと七桜さんの管理不足よ。

でも、安心してちょうだい？
冨岡さんにも、七夕のお菓子を作るよう頼んでおいたの。
笹を模した上生菓子、それから…、星型の最中よ。｣









.









椿｢…………仕方ない、あるものを持っていくぞ。｣









.









椿の言葉を聞いて満足そうに口角を上げた女将は、
用意していた最中をそそくさと運びに行った。









**

◆71→←□69

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す