第弍幕 彼女の態度 ページ3
Aside
赤色の話が終わる。実際に起こったことだとは思いたくないくらい、悲惨で凄惨で救いがない。
「怖かったか？ 悪い、一気に話しすぎた」
「いや、いいよ。大丈夫」
「大丈夫な人の顔色じゃないよ。もうちょっと休んでて、私達がなんとかしてあげるから」
──
円堂side
エイリア学園の奴が、雷門中に来て。残酷なことを言いながら、俺達の部室を壊した。カラリ、と落ちた木札だけ拾って、予告された通り笠美濃中に向かった。
惨敗だった。レベルが違った。何人かは入院することになった。けれど、みんな諦めなかった。もっと強くなって、いつかきっと勝ってやるんだ。
雷門に帰ってきて、みんなで倒れたきりのAを囲む。みんな何も言わなかった。
すうすうと寝息を立てているAが、気持ちよさそうで少し安心した。倒れたときは本当にゾッとした。慌ててベンチに運んで、校長先生に近くで見ていてもらって……。本当に、何事もなくてよかった。
「ん……此処は？」
「A！ 良かった！ 目が覚めたのか」
目を覚ましたAは、どこか様子が変だった。
「……質問に答えてよ」
「え？」
鋭い声に、一瞬何もかもわからなくなってしまった。なんで、A、だってさっきまで。
「冗談はやめてくれ、A」
「Aって誰。君たちも誰。ここはどこ」
いつもの、どこか小動物を思わせる目じゃない。睨みつけられて、足がすくむ。
Aは、俺達の後をついてきて、時には手を引いて、いつだって楽しそうに笑う。
違う。嘘だ。だって、なんで。呼吸が浅い。ドクドク、心臓の音が早くなる。
「本当に分からないのか？」
風丸が、Aと目線を合わせて問いかける。一番懐いていたし、風丸なら。誰もが願った。いつものAに戻ってほしかった。でも、現実は残酷だった。
「わたしは君たちを知らない。はやく、答えて」
誰一人、動けやしなかった。指先さえ凍りついたかのように動かない。
Aはため息をついて、どこかへ行ってしまう。足音がしなくなってから、ようやく後ろを向けた。もう校門を出るところで、呼び止めても止まらない。
「うそ、だろ？」
「残念ながら、現実だな」
鬼道も、豪炎寺も、声が震えていた。風丸も、染岡も、俺も。他のみんなだって、驚いて何もできなかった。
手が震える。武者震いじゃない。やけに寒くて、凍えそうだ。
──「Aって誰」
その言葉が、頭の中で渦巻いた。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2018年11月3日 19時
