world８５ まがいもの ページ49
瑠奈side
「ゴッドノウズインパクト！」
よく通る声が、高らかに告げた。
ボールはキーパーの技を破り、ゴールに入る。同点に追いついたんだ。
「やったぁ！」
尻尾があったら、ブンブン振っちゃってるんだろうなってくらいに気分が高揚する。温かいようなぬるいような目で見られている気がしなくもないけど、嬉しいものは嬉しいのだ。
「ウォーミングアップはここまでだ。総員、戦闘態勢。オペレーションZ発動！」
アメリカの監督が、なんだか不穏な指示を出した。と、そこで、携帯の通知音が鳴った。
「あれ……って、あ！？」
いつの間にか、ヘブンズタイムが破られた。取り落としかけた携帯をぎりぎりで握って、監督に視線を向けた。周囲の疑問に対して、ちゃんと説明してくれるようだ。
「ヘブンズタイムは一種の暗示。マジックの視線誘導の要領で、相手の意識を暗示にかけ、時間が止まったように錯覚させているに過ぎません」
「それを見抜いたんですか！？」
「だからって、あんなに簡単に攻略できてしまうだなんて」
ベンチの面々から、口々に疑問が上がる。大体はなんで見抜けたのか、どうやって攻略したのか、の二つだ。
「それは多分、彼らが兵士教育をされているから、かな。彼らは強いメンタルで、理性で、命令遂行に関わらない情報を排他する。命令を遂行するための犠牲を顧みない。先に命令っていう暗示をかけられていたから、重ねがけが難しかったんだろうね」
「いやはや、恐ろしい話ですね〜」
フィールドの状況がまた動いた。アメリカ選手達がフィールドを動き回り、なにかをしている。遠いし、細かい動きはよくわからないけど、うーん……なんだろう、あれ。
あの動きなら、土の中に細工しているわけではない。掘り返した跡もないから、表面になにかしているんだと思うんだけど、それが何で、なんのためなのかはわからない。
考えている間に、不動が突っ込んでいった。まあ道を開けて待っているように見えるし、煽られてるように感じて怒るのも無理はない……かな？
とある一点に足を踏み込んだ瞬間、爆発が起こったように不動が吹き飛ばされた。ボールは場外、他のメンバーは誰も動けていない。あれはだめだ、多分医務室に連れて行かないと。応急処置程度じゃすまない。
「【地雷原】、仕組みを見抜くにはもっと注意して見ないと……でも、」
他にも犠牲者が出るのは、なぁ。視界が霧に包まれたような気分だ。でも上等、絶対見抜いてやろうじゃないか。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
