world８４ それは神のような ページ48
瑠奈side
アメリカ戦当日。ネイビーインベーダーは全員オリオンの使者、不安は大きい。そんな中岩戸が危なげにフラフラとしていた。風丸が思い出したように問う。
「そういえば、昨日は遊園地に行ってたんだったか？」
「ああ、メリーゴーランドとコーヒーカップだけは楽しかったな」
「有意義な時間を過ごせたよ。ね、ヒロトくん、ゴーレムくん」
稲森もいつの間にか居なくなってるけど、どこに行ったんだろう。試合開始直前、稲森がようやく戻ってきた。なんだかすごく張り切っているようだ。
相手チームのスタメンが発表された。名前、というより、なんだか軍事組織のコードネームみたいだ。
「相手が危ないことしてきたら、すぐに手当してあげるからね！」
「姉さんもそれなりに張り切ってるよな……」
隣でしみじみと呟いたあげはは放っておいて、試合の運びを観察する。
日本ボールでキックオフ、パスを回しながら上がっていく。氷浦がボールを奪われ、そのまま攻め上がられてしまう。稲森が果敢に対応するも、飛ばし過ぎなようで空回り気味だ。
隙をついて不動がシュートを打っても、キーパーに止められる。その後も、稲森はなんだか力の入りすぎたようなプレイを続ける。
シュートを打たれ、円堂が一度弾いた。けれど、上空にあがったボールは何故か戻ってきてゴールに入ってしまう。
「すごい、な……」
「うん。コントロールが、気味が悪いくらいに上手だ。回転も、スピードも、調整されきったみたいな……」
日本ボールで試合が再開。したんだけど、照美がボールを受け取ってから立ち止まった。二人のアメリカ選手が上がってきていて、とても悠長にしていられる場面じゃない。
ふと、彼が左手を上げた。
「あれは……！」
「ヘブンズタイム」
時間が止まる。気付いた時には照美は二人の後ろにいて、二人は突風に巻き込まれ弾き飛ばされていった。彼はそのままゆっくりと進んでいく。
「オリオンの者たちよ。僕は君たちのことをずっと見ていたんだ……君たちがサッカーを穢し続けているのをね」
二回目。
「自分のことを神と思い上がっていた僕に、大切なことを教えてくれたサッカーを、君たちは傷つけた」
三回目。
「許すわけには行かない。……君たちに、負けるわけには行かないんだ」
四回目。
「絶対に倒して見せる。僕は、僕らのサッカーを守るために。神の鉄槌を……いや、人の怒りを受けるがいい！」
そう言って、彼は地面を蹴って飛び上がった。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
