world８２ もうかなわないな ページ46
瑠奈side
「一緒に、走りたかったよ。おんなじコートに立ちたかった。連携技とかできたら、きっと楽しかったんだろうなぁ」
ごめんね、ごめんね。全部出来なくて、やってあげられなくなっちゃってごめんね。謝罪を繰り返すことしかできなくて、ボクはやっぱり弱いんだと痛感した。弱い、というより多分、できることが少ない。
未来予知ができるわけじゃないから仕方ないかもしれないけど、結構間が悪い。今回とか、もうちょっと持ったかもしれないけど、円堂に見つかったからとすぐにマネージャーに転身してしまった。もったいないな、とは思うけど、もしピッチで倒れたりしたらそのほうが迷惑だろうから、念には念をということでこれで良かったのかもしれない。
あと、どのくらい同じ時間を過ごせるだろう。悪い方向に考え出してしまったらもう止まらなくて、ぐるぐると重くて黒い闇がぱっくり口を開けて待っているような錯覚に陥る。呑まれるような、そんな恐怖に体が震える。涙がどんどん溢れ落ちる。
「ゔゔ〜……」
「大丈夫、大丈夫。ここにいるよ。落ち着いたらまた話そうね」
ぽん、ぽん、ぽんと規則的なリズムで背を叩かれる。優しく優しく叩いてくれる。段々と呼吸がそのリズムに合うようになってきて、呼吸が落ち着いてきた。
顔を照美の服から離すと、涙が染みになっているのが見えた。ごめん、といえば、落ち着いた？ 洗えば大丈夫だよ、と返された。こういう優しい声と、柔らかい表情が好きだ。残っていたのかこぼれた涙を拭って頷く。
「うん」
「良かった。……僕が言いたいのは、ちゃんと周りを頼ってほしいってこと。僕達を信じてほしいってこと。それと、一人で突っ走らないこと。これだけだよ」
一本ずつ指が立っていくのを見ながら、涙を一気に拭った。涙が引っ込んだらもうメソメソうじうじするのは終わり、元気に振る舞わなきゃ。
「簡単そうに言うけど、出来てないのがボクだからね！ 急に全部一気にやれとか言わないでよね！」
「偉そうにできることじゃないから……手始めに今やってること全部吐こうか。結構な綱渡りしてるんだってね？ 二人から聞いてるよ」
「あ……」
元気に、元気に……振る舞わなきゃいけないのにな。照美の背後に鬼が見えるようで怖い。向かいのベッドでふたりもびっくりしてるけど、多分ボクが一番ビックリしてると思う。
「ごっ……ごめんなさいぃぃ！」
さっきのゴーレムとヒロトのに悲鳴くらい響いたんじゃないかな。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
