番外編 長く短い白昼夢�� ページ38
瑠奈side
部屋に沈黙が落ちる。みんな、話したいことはあるけど言い出せない、って感じかな。
「……瑠奈、か？」
「あー……えっと……」
「流石に、丸わかりだよね。はじめまして、になるのかな。ボクは中学二年生の篠宮瑠奈だ。所謂パラレルワールドから来て、此処のボクと入れ替わっちゃったんだ」
豪炎寺が口を開いたことで、事情を説明する流れができた。話を進めるにつれて、豪炎寺が目を見開いていく。
「──とまあ、こんな感じなんだよね」
勿論、柚葉の凶行は伏せておく。しょんぼりとして怯えている姿が可哀想で、可愛い。嗜虐趣味はないんだけど、なんでだろう。
「あ、そうだ。普通に話してたけど、ボクの方が年下ってことだし……敬語のほうが良い？ あ、良いですか？」
「いや、いい」
「円堂……さん、は？」
「絶対やめてくれ」
食い気味に否定されるものだから、あまりの勢いにびっくりした。此方としても、敬語は違和感しかないから断ってもらえてありがたいけど。でもそんなに嫌なのかな。
「状況は分かった。お前はどのくらいで戻れると思っているんだ？」
「……元々の効果が一日だった。だから同じくらいだとは思うけど、効果が変容してるからどうなるかわからない。……そもそも、戻れるって確信もない」
口に出すと、本当になってしまいそうで怖かった。隠して騙すような真似は嫌だ。したくない。でも、これが本当になってしまうのも嫌だ。我儘だけど、吐き出してちょっと楽になった。
「どうせ一日で戻るから大丈夫だろ。心愛が言ってたし……あ、そうか伝えないと分からないのか」
「心愛が出てたときのことはボクにはわからないんだよね。その辺りは説明お願いするよ」
「んなこと言ったって、意味深なこと言って柚葉ひっぱたいただけだからなぁ。んまあ、気にすんなよ、どうにかなる」
あげはは呑気に笑って、柚葉は少し怯えたように身を縮こまらせた。
「……私としては、洒落にならないくらい怖かったんですけど」
「まあまあ、あれは彼奴を怒らせたお前が悪いんだから。……でもまあなんか、怖かったのには同意だ」
何なんだろう、本当に。心愛が絶対的なのはこっちの二人の間でも同じみたい。だけどなんだか、ボクの方の二人の向ける感情とこっちの二人のそれは違う気がした。
困ったように頬を掻く円堂と、何か考え込んでいる豪炎寺を見てから、やっぱりボクも首を傾げた。帰りたいな、この人たちちょっと面倒くさそうだ。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
