番外編 長く短い白昼夢�� ページ37
瑠奈side
円堂の部屋に入って、やっと一息つけた。心臓が飛び出すんじゃないかってくらい怖かった。
部屋の中は、物が少なくてすっきり整頓されていた。まあ宿舎だから、持ってくるものが少なかったんだろうと片付けた。
「……守にぃの部屋じゃないなぁ」
同じ人間だけど、違う存在だから仕方ないか。ぽふぽふと軽くベッドを叩いてシワを伸ばす。少しきれいになったベッドの上で転がる。窓から差し込む光が、目に痛い。
優は泣いてないかな。薊は泣かせてないかな。他の人たちに迷惑かけちゃって、本当に申し訳ないとは思うけど、上手くやってるかな。
此処のボクはかなり大事にされてるけど、それに気付けてない。いや、理解できてるけど実感はできてないってところかな。自分を餌にして動いてるみたいで、危険な綱渡りばかりして心配されてる。
「ばかみたい」
人のことは言えないけど、彼女のそれはボクの比じゃない。自分のこと全然大事にしてない。
「……ボクも、こんな風に思われてるのかな」
流石にここまでひどくないけど、これからちょっと気を付けよう。
さて、何をすれば帰れるんだろう。調べるにも此処のボクの端末は使えないだろうし、なぁ円堂が戻ってくるのを大人しく待つしかないかな。
現状を整理しよう。合わせ鏡をした。気持ち悪い光に包まれた。違う世界にやってきた。柚葉に会って、縛られた。円堂に助けられて円堂の部屋に来た。
取り敢えず、表立って敵対視してくるのは柚葉だけ。あげはは、ちょっとよくわからないから刺激しないようにしておこう。下手を打って敵対されたくない。
ふと、足音が聞こえてきた。一人じゃなくて、多分四人くらい。誰だろう。ここに用があるのか、それともただ通り掛かっただけなのか。
足音は部屋の前で止まった。小さな話し声がしたあと、控えめにドアがノックされた。
「偽物ちゃ……ちょっ、ごめんごめんごめんって！ 誠意が足りてない？ 嘘でしょ！？ ごめんなさい！ 瑠奈ちゃん、部屋に入ってもいいですか？」
「うん、どうぞ。って言ってもボクの部屋じゃないけどね……」
ドアを開けて、すぐ離れた。周りに人がいるから大丈夫だろうとは思うけど、やっぱりちょっと怖い。
「……えっと、柚葉？ 大丈夫……じゃ、ないよね。怒ってないし、心配してくれたのわかるから……」
「心配なんてしてないです！」
食い気味に否定して、柚葉はそっぽを向いた。不機嫌な顔をしていたけど、その耳は真っ赤だった。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
