番外編 長く短い白昼夢�� ページ35
柚葉side
「な、んで」
「ちょっとこっち来てもらってもいいかー？」
「……はい！」
なんで偽物ちゃんが外にいるんでしょう。まあ、円堂さんに助けられたんでしょうけど。ああこれだから、気に食わない。助けられて、弱い自身を良しとしているそれが、どうしょうもなく嫌い。
円堂さんはさり気なく通路の影に偽物ちゃんを隠して、グラウンドに居る皆さんから見えないようにしている。偽物ちゃんと皆さんの混乱を防ぎつつ、私のやったことも隠そうとしてるんでしょう。
「お優しいキャプテン様に守られて、良かったですね」
ああ、ちゃんと笑えていますかね。ふたりとも顔が引きつってるの隠せてませんけど、大丈夫でしょうか。
「菜花、そんな言い方──」
「私はこの偽物ちゃんがだいっきらいです。私の姉さんがめちゃくちゃにされるみたいで、どうしょうもなく嫌なんですよ」
段々とつり上がっていく口角。嫌ですね本当に、気に食わないとすぐに態度に出してしまう、役に立っていない私の自制力。にっこり笑みを形作っていても、機嫌の悪さはバレバレらしく。近づいてきたあ〜ちゃんに気づかなかった。
「一人で突っ走るからだバカ。悪い、小さい瑠奈さん。あんたの反応でユズが何したのかは大体わかった。ユズも気が立ってるから、申し訳ないんだが大人しく保護されてほしい」
「“わかったけど、口のこれ外してほしいな。それからボクは移動するよ”」
「あ、ああ……口の……？」
偽物ちゃんがマフラーを取った瞬間、あ〜ちゃんに拳骨を落とされた。かなり強いやつだった。これはブチギレ案件だったか。
「何してんだユズ。一応聞いておくが、手足を拘束した他に何やった？」
「…………目隠しと、ちょこっと脅しを……」
「笑い事じゃないからな本当に。小さい瑠奈さんが許さないならお前をお縄につかせるからな」
予想の数倍、やばかった。後で同じ目に遭わせるって言われるかも。容赦ないから怖いんだよねあ〜ちゃんの制裁。
「ん、ぷはぁっ！ 思ったより倫理観とか道徳心っていうものが欠如してるよね君たち。ボクも人のこと言えないけど、ボク以上だよ？」
「偽物ちゃんに言われたくない！」
「えーっとねぇ……ボクからしたら、君もそこのあげはも、偽物なんだけどね？ その……心愛が、かなり怒ってると言いますか。あっ、別に告げ口とか報復とかじゃないよ？ ただちょっと、一発その横っ面ひっぱたいてやりたいな、って……言ってる」
もう絶対しない。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
