world６６ 知られたくなかったこと ページ20
瑠奈side
「はー……ここ数年で一番笑ったよあ〜ちゃん」
「ホントお前ふざけんなよ」
「はいはいふたりとも、人様の部屋で喧嘩しないで」
ユズは口を抑えていて、それでもあげはの顔を見ると思い出してしまうのか笑い転げている。笑い過ぎていて、ちょっと心配になってきた。
あげはの方は、もう無、って感じの顔。さっきまで怒っていたのに、一瞬で自分を落ち着けた。
「えーっと……話しても、いいか？」
「すみません、どうぞ。ユズは目でも塞いどけ」
「はーい」
「ゴメンネ、騒がしくして」
円堂は楽しそうに、仲がいいな、と言った。普通の家庭より距離が近いかな、とは常々思っていたけれど、改めて口に出されるとなんだかムズムズする。
「さっき、“沙織”からお前達のことを聞いたんだ。……お前達が未来から来て、それで……瑠奈が、もうあんまりここに居られないこと」
「は？ ……待って、待って。アイツ何考えてるの？ 混乱させるに決まってるじゃん、試合の前なのに……普通、大会中にそんなこと言う？ 焦りとか動揺とかで、プレー鈍るかもしれないのに……」
最初に怒り出したのはユズ。あり得ない、を連呼して、手を固く握って顔をしかめている。あげはは想定外だったのか、何もかもわかりません、とでも言うように困惑している。
かくいうボクも、そんなことを教えられていたと知って冷や汗が止まらない。あの偏屈本当にロクな事しないな。どこまで話したのかわからないから迂闊に話せなくなった。どうしてくれるんだ。
「……円堂。君、どこまで知ってる？ この際ユズとあげはに知られてもいいから、彼奴が何をどこまで話したのか知りたい」
「……知られたく、ないことだったんだな。やっぱり……分かった。ちゃんと全部話す。その代わりに、今度からはちゃんと、俺達に相談してほしい。辛いなら、言ってくれ」
普段なら心地いい、スッキリするくらいまっすぐなその視線が、今は酷く恐ろしく見えた。
「…………わかってる、よ」
絞り出すような声でしか答えられなくて、とてもとても怖かった。ああ、本当に。彼奴は、嫌いだ。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
