world５９ 不安定かつ欠落した姉 ページ13
瑠奈side
「まだ、か……足りないなあ」
「圧倒的に、証拠が足りねー……現場は抑えてるけど、肝心な乗っ取りの証拠がなー……」
取り敢えず、彼の人の財団乗っ取りの動機はある。でも、どうにもそれが本当の動機ではないように思えて仕方ないのだ。
「ボクへのサポーター制作依頼も、全く意味がわからないし、第一人の体を壊すような真似しないでほしいんだけどなぁ。量があれば納得できるけど、たった一つだけ試作品を、でしょ？ なんでだろー」
彼の人は亡き旦那を嫌っている筈。色に狂ったわけでも、喪失感にかられているわけでもなさそうなのに、何故。
人の心を理解できないボクたちには、この問題は重すぎた。もう少し昔のボクなら、きっと理解できたんだろうけど。でも、今のボクにはできなかった。
「いやー……未練がまだある方向で見てみるか？」
「そうする？ あーでも……ユズに頼めば、一発なのかな？」
「俺達の中で一番人の心身に詳しいの彼奴だしな。……あ、そいや心愛には相談できないのか？」
「心愛は急に居なくなっちゃって。事故前まではちゃんといたのに、なんかねー」
「……それ、本当に大丈夫か？」
軽く考えているように話しているけど、これ結構ヤバい。心愛はボク達全員のメンタルケア及びヘルスケアを行っていた。そのお陰で一番精神状態が悪かったのも彼女だが、スーパーポジティブシンキングのお陰でなんとかやっていたらしい。最悪、一日中誰かに引っ付いていれば回復するのでお手軽でしょう、と笑っていた。
「心愛って、仮面被るの上手だよねぇ。騙し欺きはボクの専売特許なのに、騙されちゃったもの。心愛、凄いよね」
会いたくないわけじゃない。でも、時々不安になる。一番迷惑をかけているのはボクじゃないとは理解していても、いつか愛想を尽かされて心愛が居なくなってしまったら。嫌われてしまったら。
これは、あげはにだってユズにだって……勿論照美にだって言えたこと。人の心は移ろうもので、ボクとずっと一緒にいてくれるわけじゃない。
「あげは達だけは、僕を置いていかないでね」
「何言ってんの？ つか、置いてったのは姉さんのほうだろ。俺とユズほっぽりだして、あー思い出すだけで腹立ってきた。ちょっと一発殴らせろ？」
バタバタと音を立てて逃げようとしても、すぐに捕まった。ああ、平和だ。
───
心愛ちゃんについてご存知ない方はこちら。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
