32 さよなら、ありがとう ページ33
本当に自分との子どもなのか、と問いかけられて、別の人との浮気を疑われているみたいなショックだったのと同時に拒絶をされたように感じた。
私の被害妄想だと言われてしまったらそれまでだ。けれど、ずっと春くんの隣に居たはずなのに、信じて貰えないのが切なくなってしまった。
「……他に、誰がいるの?」
「灰谷とか。」
私、そんなに軽い女じゃない。春くんが初めての相手だった訳でもないし、穢れを知らなかった訳でもない。
かと言って、付き合ってから春くん以外の人に体を許した事なんて1度たりとも無い。
「そう、思うならそれでいいよ。」
もう、冷静で居られなかった。いつもなら、冷静になろうと理性的であろうと思えるのに。
今は、彼の顔を見たくなくて、少しの間……離れた方が良いのだろうと判断した。
私の為にも、春くんの為にも。
「は?良い訳ねえだろ。舐めてんのか?」
私の肩を掴むと、ギリギリと強い力が加わる。……痛い。でも、不思議と痛みよりも怒りの方が強くて手を振り払ってしまう。
刹那、驚いたような表情を見せるが、相手もすぐに怒りを含んだ表情を見せた。
……面倒くさい。無駄な争いをしたくない。今はただ、1人になりたい。
彼から背を向けて、鞄を手に取って、玄関の方へと向かった。
「何してんだよ。」
「……出てく。暫く、春くんと離れた方がいいと思うの。お互いのために。」
春くんなら、私との子ども……喜んでくれるって信じてたのにな。
私を抱きしめて、「3人で幸せになろう」って言ってくれると、思ってたのに。
悲しいけれど、涙は出てこなかった。……ああ、きっと。以前のように人前で泣かないと、無意識に誓ってしまったようだ。
「もう、帰ってくんな。」
背中越しに吐き捨てられた言葉。その言葉だけが頭の中で響くような感覚。
1度だけ、振り返って彼の姿を捕らえて、大きく息を吸った。
「わかった。私たち、終わりなんだね。……今までありがとう。さようなら。」
出会いも別れも唐突にやって来るものだ。案外、あっさりとした別れだった……なんて。
扉を閉めて、大きく溜息をついた。……これから、私は何処に行こう。彷徨いながら、途方に暮れてしまう前に、私はビジネスホテルへと向かった。
今は、体を休めることが最優先だ。私の為じゃない。お腹の中にいる子どもの為に。
結局、この子をどうするか話し合う事も出来ないまま、彼と離れてしまった。
……どうしよう、か。
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時