帰宅したら家に反社がおりまして。【三途春千夜】

33 どうしよう ページ34

勢いでビジネスホテルまでやってきたものの、これから私は行く宛てが無くなってしまった。

少なくとも、以前まで住んでいた春くんとの住処には帰ることが出来ない。そして、避難している現在の住処にも帰ることは出来ない。

安いホテル探したところで結局出ていくお金は大きくなってしまうだけ。

ましてや、会社の同僚や後輩を頼る訳にもいかない。……反社の彼との子どもが出来て、そこから喧嘩になりました、などと言えるはずもない。

考えていたらどんどん頭が痛くなっていく。でも、考えないと先が見えてこなくて絶望してしまいそうになるし。私は一体どうするのが正解だったのだろうか。

……その前に、お腹の中にいる子をどうするべきか考えるのが先か。

早いなら早い方が良い。何もかも。

私1人で育てる自信は正直言ってない。シングルマザーで子育てをするのは大変だ。私の友人もそれでかなり苦労しているのを目の当たりにしているから、尚更。

シングルマザーになるなら、最低限支援してくれる人がいないと育てるのは困難だ。

親は……頼れない。というか、1人暮らしをするのも反対だった親を押し切って出てきてしまったから、1度も実家に帰っていない。

だから、いきなり帰って「妊娠しました」なんて報告とてもじゃないけれど、出来る訳がない。

それに、子どもの相手は反社だ。最も家の両親が嫌うような人種。春くんと付き合う事だって本来だったら反対されていたはずだ。

父親は弁護士、母親は法律事務所勤務。……そんな家で育った私が、まさか反社の人間と付き合って、子供を身ごもっただなんて到底思えないだろう。

そうなると、1人で育てていくしかないのか。もし、産むとしたら。

子育てなんて未知の世界なのに、私1人で大丈夫なの？片親だからという理由を言い訳に色々と蔑ろに出来る訳じゃない。

むしろ、1人だからこそちゃんとやっていかないといけない。

なんだか、気が重い。

春くんは、やっぱり子ども要らなかったみたいだし、何よりも自分の子供だと思いたくないらしい。……春くん以外の人とそんな事する訳ないのに。

もし、産まれて来る子が私じゃなくて春くんに似てしまったら。……彼の影を常に思い出しながら子どもを育てていくのだろうか。

嫌い、なんて思う日がくるとは思えない程に、私は彼の事が好きなのに。

想いは重い。難しいけれど、結局は他人だから気持ちなんて本人にしか分からない。

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