40 何も知らないまま ページ41
「ねえ、こんなのプレゼントされても着ていくトコなんてないよ。」
試着し終えてカーテンを開けて言ってみれば絢爛な顔立ちがみるみるうちに面白くなさそうに歪んでいく。
「は?別にいいじゃねえか。俺の好意を受け取れねえのか?」
そんな言い方するなんて、本当に狡い。それを言われてしまったら、私は何も言えなくなってしまう。無自覚な彼が少しばかり憎い。
「そうじゃないけど……。」
「次、これな。」
新たに、別のドレスを手渡されて試着をして、見せると春くんが「これが1番いいな。」と勝手に納得してカードで支払っていた。
「……このまま着て行くぞ。」
「ちょっと待って。……さすがに
数多く狂い咲いているような赤い花を指さすと小さく舌打ちをして「コレもカード払いで」とファーガウンを着せてくれる。これまた高そうな……と思い、肩に乗っているのが重たく感じてしまう。
こんな高価な物をポンとカードで支払える彼はやはり何処か金銭感覚も何もかも狂っているらしい。それに……やたら目立ってしまうというか、少し外を歩いているだけで視線が集まるから縮こまってしまう。穴があったら入りたい気分だ。
こんなドレスを着て今からどこの金持ちがいるパーティーへ行くの?というくらいだ。私は身の丈にあったものを身につけたいし、今すぐに着替えたいのだけれど……。
きっと、春くんはそれを許可してはくれないだろう。
このドレス、今日着たら死ぬまでに数えるくらいしか着ないだろうし、もしかしたら一生着る機会はないかもしれない。
……それでも、大切にとっておけばいいか。折角春くんが私に「1番いい」と言って選んでくれたものなのだから。
肩ががっつりと開いていて鮮やかなブルーに黒のフラワーレースが施されているドレス。先程、他のドレスのタグをチラッと見てみたが1着10万円以上するものがあった。こんな高価な物を受けとる事に未だ躊躇いはあるが、突き返した所で「俺に文句あんのか?」と一言で威圧されてしまうのがオチ。気が引けるけれど、素直に受け取ってその分大事にしようと決心をする。
再びタクシーに乗ると、今度はなかなか泊まる事が出来ない1泊数十万する高級ホテルへと辿り着く。私が口を大きく開けてホテルの外装を見ていると手を引かれてそのまま中へと入っていく。
私は彼の思惑も何も知らないまま。
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モック - 完結おめでとうございます!物語中の春千夜君がかなりヤバくて(語彙力www)最高でした! 応援してます! (2022年9月24日 10時) (レス) @page50 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 来夢さん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。大変恐縮です……!これからも面白いと思って頂ける作品が書けたらと思います! (2022年2月19日 0時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした🙇♂とても最高でした!私にはこんな神作作れないので羨ましい限りです😭あ、作者様の春千夜くんドタイプでした!これからもずっと応援させて頂きますので、よろしくお願い致します🤲 (2022年2月15日 3時) (レス) id: e2197c2b6d (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 楸さん» コメントありがとうございます。自分にとっても楽しくかけた小説でした♪スランプに陥って書いては消してを繰り返しておりますが、自分の納得した作品が出来て書き続けられたらまた別作品を見ていただけたらと思います。 (2022年2月14日 1時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 完結おめでとうございます!!マジで最後の方はあ゛あ゛泣って感じで一人で焦ってたんですけど、あらぁ!!って終わり方でもう兎に角大好きです!!語彙力が行方不明になるくらい素敵な作品ありがとうございました!! (2022年2月14日 1時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2021年12月12日 0時