31 彼に何が起こっても ページ32
21時を回った頃。既読はついているものの返事はなかった。本当に何かあったんじゃないかとまた不安を募らせる。
1人の時間が長くなればなる程、ネガティブな思考に陥って、悪い方向に憶測立ててしまう。
ガチャガチャの乱暴に扉を開ける音が玄関先から聞こえると立ち上がって、玄関へと走っていた。
扉を開けた刹那、彼の姿を見つけると彼の胸へと思い切り飛び込んだ。
「うわっ……!」
「既読つけたら返事してよ。」
「家帰った方が早ぇと思って。」
「この数日間、心配してたんだよ?……数日家を空けるなら先に行ってよ。」
友達なんかじゃない、ましてや恋人でもない。私が彼を縛りつける理由はないし、彼が何をしていようと教えてもらう理由なんてない。
でも、私は怖かった。……春さんがいなくなってしまったら、と考えるのが。もしそうなったとしてその現実を受け入れるのが。
認めたら、もう後戻りは出来ない。まだ認められない。だから、自分の気持ちを偽り蓋をする。
「悪かった。ここ最近が珍しかっただけで普段は家に帰らねえから。家に俺がいなかったらそんなもんだと思ってくれ。」
「……ん、わかった。」
そうだ、三途春千夜という人物は私と全く違う世界で生きている。常に危ない世界で生きているのだから、何が起こってもおかしくはない。……そう思っていないといけないんだ。
いつかは、この温もりが消えてしまうかもしれないと思い知ってしまえば離れるのが名残惜しくなってしまってぎゅっと抱きしめたまま。
それに応えようとしてくれているのか、彼も躊躇いながら私をそっと抱きしめてくれる。しかし、彼のお腹が鳴ったのが聞こえて思わず彼の顔を見上げてしまった。
「お腹すいてるの?」
「朝から何も食べてねえんだよ。」
ムードぶち壊しだけど、そんな些細な事から彼が生きていると実感して安堵をした。
「……じゃあ、ご飯一緒に食べよう?」
「そうだな。」
電子レンジで作ってあった料理を温めなおして、野菜スープの鍋も火をかけて温めた。温め終えて、野菜スープを器に入れていると、レンジから料理を取り出して机の上に置いてくれる春さん。
「ありがと、春さん。」
「は?勘違いしてんじゃねえぞ。腹減ったから早く食いたいんだよ。」
「……そっか。」
「「いただきます。」」
2人で向かい合わせにご飯を食べ始めた。数日だけしか離れてないのに、何年も離れていたような感覚。認めたくないけれど、これはきっと……。
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モック - 完結おめでとうございます!物語中の春千夜君がかなりヤバくて(語彙力www)最高でした! 応援してます! (2022年9月24日 10時) (レス) @page50 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 来夢さん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。大変恐縮です……!これからも面白いと思って頂ける作品が書けたらと思います! (2022年2月19日 0時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした🙇♂とても最高でした!私にはこんな神作作れないので羨ましい限りです😭あ、作者様の春千夜くんドタイプでした!これからもずっと応援させて頂きますので、よろしくお願い致します🤲 (2022年2月15日 3時) (レス) id: e2197c2b6d (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 楸さん» コメントありがとうございます。自分にとっても楽しくかけた小説でした♪スランプに陥って書いては消してを繰り返しておりますが、自分の納得した作品が出来て書き続けられたらまた別作品を見ていただけたらと思います。 (2022年2月14日 1時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 完結おめでとうございます!!マジで最後の方はあ゛あ゛泣って感じで一人で焦ってたんですけど、あらぁ!!って終わり方でもう兎に角大好きです!!語彙力が行方不明になるくらい素敵な作品ありがとうございました!! (2022年2月14日 1時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2021年12月12日 0時