帰宅したら家が燃えておりまして。【三途春千夜】

03　殺られるくらいなら ページ4

「……この人の家と間違えて私の家を燃やしたって事でいいですか？」

「ああ。」

「そう、ですか。」

キラキラと街を明るく照らしている灯をこんな真上から見るのは初めてだ。こんな所にいて、本当は落ち着かないけれど、平常心を保つ。私は大丈夫、強い女、出来る女……自分に自己暗示をかけて今も乗り切ろうとしている。……ずっと、こんな風に人に弱さを見せないように生きてきたんだから、今だって大丈夫なはず。

「なあ、お前さぁ。」

突然、顎を掴まれて三途さんの方に無理やり向かされている私の顔。顎先に彼の指が添えられているだけなのに、彼の力が加わってくるにつれて痛みが伴っている。

「無防備にも程があるんじゃねえの？」

歪んだ表情に、三日月のように曲がった唇。その表情は美しくも恐怖を植え付けてくる。彼の顔貌が美しいが故に怖さを増していた。

「男がなぁ、こんな見ず知らずの奴を家に迎え入れる時は、見返りを求めてるか……下心があるかのどっちかなんだよ、覚えとけ。」

……あ、これはマズイやつだ。察した時には既に遅くて、私の身体は彼の下にあった。

このまま、ヤられちゃうかな。でも……それだけで済むなら、まだいいか。殺されるよりはずっとマシ。

なら、彼に従った方が絶対にいい。私はまだ死にたくないし。……それにヤられたって、絶対に泣いてなんかやらない。泣いたら、彼の思うツボだ。

三途side
「……抵抗しなくていいのかよ。お前、今の状況わかってんの？」

ブルブルと震えている身体とは裏腹に表情は強気でそれが余計に……俺を駆り立てていく。

「殺られるなら……大人しくヤられる方がいい。」

本当は怖いくせに強がる事を辞めないバカな女。それもまた面白くて、泣かせてやりたくなる。バカ女の服に手をかけてみれば、少しずつ潤んでいく瞳。先程よりもガタガタと震えている唇と身体。

「喚いたり、泣いたりしねえんだ？」

「……人前でなんて絶対泣かない。貴方が泣いて喜ぶなら、死んでも泣いてやんない。」

面白い奴。普通に喚いたり泣き叫んだりすりゃあいいのに。それをしないで強がって、自分を貫いてくる所は……評価してやるか。

服にかけていた手を離し、女に跨っていた身体もどかしてやった。その途端、驚いたような表情と安堵した表情が混ざっていた。

今まで出会ってきた女にはいない珍しいタイプ。少しだけ、此処に置いて可愛がるのもあり、だな。

「お前、気に入った。……暫くよろしくな、A。」

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