02 三途春千夜の領域 ページ3
三途さんの言う通りにした私は思わず息を呑んで高く続いているマンションを見上げる。三途さんはマンションの入り口の前で私を睨みつけて、遠回しに「早く来い」と目で訴えていた。
私は早足で彼の後についていき、セキュリティーカードを差し込んだ後、キー操作をしている後ろ姿を黙って見つめていた。……こうしてみると、ただの仕事が出来そうな美形という印象しかない。
……まあ、化けの皮剥がせばただの怖い人だったんだけど、みたいなオチ。
扉が開き、エレベーターに一緒に乗る。勿論、私達の間に会話など存在はしなかった。静寂な空間には機械の音だけが響いている。
「降りるぞ。」
それだけを言い残して、開いたエレベーターから降りる彼の後ろにまた私は着いていく。ガチャガチャと鍵音を鳴らし、雑に鍵穴に差し込んでドアノブに手をかける。
「入れ。」
いちいち命令口調じゃないと気が済まないのだろうか、と思うが、もはやこの人にとってそれは愚問だろうから敢えて触れずに言われるがまま彼に従う。
広い部屋には必要最低限の物以外は何もなかった。だからなのか、尚更広く感じてしまう。
大きな窓から見える夜景はとても綺麗で思わず感嘆の声が漏れる。それを見るなり鼻で笑う彼に、私は感じの悪い人、と思うのであった。
ヒールを脱ぎ捨て、部屋の中へと入ると三途さんに促されるままソファに座る。早速本題に入りたいのだけれど、彼の気に障ったら……殺されるかもしれない。
言われるがまま彼の言う通りにここまで来てしまったが、迂闊に彼の
でも、家は燃えて帰る場所がなくなってしまった今、彼の言葉に従って縋るしかなかったのだ。
「この男……知ってるか?」
目の前に出された1枚の写真。外見はとても真面目そうで爽やかな好青年だ。……正直、私の好みである。それはさておき、見た事もなかった私は首を横に振る。
「俺達はコイツを探している。」
「……その人は何をしたんですか?」
踏み込んだ事を尋ねている自覚はあるけれど、家を燃やされてしまった今、私にもすこしは知る権利くらいはあるはずだ。
「……言う訳ねぇだろ、バカ女。」
「あ、ですよね。」
まあ、訳アリな人達の話を聞いて深入りしてしまったら私まで巻き込まれかねないから、聞かない方が幾分マシか。
……この探している人の家と間違えて燃やしてしまったという解釈でいいのだろうか。
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モック - 完結おめでとうございます!物語中の春千夜君がかなりヤバくて(語彙力www)最高でした! 応援してます! (2022年9月24日 10時) (レス) @page50 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 来夢さん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。大変恐縮です……!これからも面白いと思って頂ける作品が書けたらと思います! (2022年2月19日 0時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした🙇♂とても最高でした!私にはこんな神作作れないので羨ましい限りです😭あ、作者様の春千夜くんドタイプでした!これからもずっと応援させて頂きますので、よろしくお願い致します🤲 (2022年2月15日 3時) (レス) id: e2197c2b6d (このIDを非表示/違反報告)
さきな。(プロフ) - 楸さん» コメントありがとうございます。自分にとっても楽しくかけた小説でした♪スランプに陥って書いては消してを繰り返しておりますが、自分の納得した作品が出来て書き続けられたらまた別作品を見ていただけたらと思います。 (2022年2月14日 1時) (レス) id: 74c94643cf (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 完結おめでとうございます!!マジで最後の方はあ゛あ゛泣って感じで一人で焦ってたんですけど、あらぁ!!って終わり方でもう兎に角大好きです!!語彙力が行方不明になるくらい素敵な作品ありがとうございました!! (2022年2月14日 1時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2021年12月12日 0時