帰宅したら家が燃えておりまして。【三途春千夜】

14　片隅で ページ15

昨夜は三途さんと気まずいまま夜を迎え、朝日が昇る頃には既に彼の姿はなかった。彼だけを見ていたからか慣れて感覚が狂っていたけれど、私と彼は住んでいる世界が全く違う。

今日は何をしようかな……あと数日で社畜に逆戻りしてしまうから生活リズムをきちんと整えておかないと。恐らく、私に降り注ぐ仕事の山が待ち構えているだろうから今のうちに覚悟しておこう。

とりあえず今日は此処で買って来たティーセットでハーブティーを堪能してのんびりお昼ご飯を食べたら夜ご飯の買い物に行くか。

三途side
床に薬瓶を投げ捨てるとカラカラと音をたてて転がっていく。片手に握りしめた幾つもの薬を一気に口の中に入れて飲み込んだ。

後ろで手を縛られている雑魚はガタガタと震えて命乞いをしていた。……無様な姿に反吐が出て余計に苛立ちを覚える。

しかし、薬の効果なのか少しずつ気分が高揚していき笑みが零れた。雑魚に銃口を向けると更に怯えて気が狂ったように叫んでいた。

「うるせぇよ。少しは黙ってられねえの？」

引き金を引き、撃つ準備をする。撃つ事に抵抗なんて何一つなかった。命乞いされたとしても、泣き叫ばれても恨まれたとしても。

……どうせ、俺はもう何度も人の血を浴びて、屍を踏み越えているんだ。今更何の躊躇いがあるというのだろう。

雑魚の頭を問答無用で撃ち抜いた。あーあ、服に血がついちまった。家に帰って洗い流さねえとな……。

顔についた血を手で拭うと、Aの存在を思い出す。……アイツが家に居たんだった。俺のこんな姿見たら、どう思うだろう。

絶対に泣かないと強がってたアイツも流石に恐怖で俺から離れていくんだろうな。なんて、別にアイツが俺の事警察に垂れ込んだりしなきゃいついなくなってもいいんだけどな。

……そう、思ってんのに。

Aに怯えられるのは初めて出会ったあの時が最初で最後にしたいと心の片隅で思ってる。

あー……考えるのも面倒くせえ。とりあえずアイツが出かけている事を願って家に一旦帰るか。もし靴があったら引き返して別の場所でシャワーを浴びて着替えればいい。いなかったらそのままシャワーを浴びて血塗れになったこのスーツは捨てるか。

雑魚に車を走らせて家に帰るとAの姿はなかった。連絡アプリを開いてみても連絡は何もないどころか俺が送った文すらも既読をつけていない。アイツ、絶対わざと未読してんだろ……。帰ったら問い詰めてやるか。

15　警戒心剥き出し→←13　灰谷兄弟

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す